夜を歩こう

夜を歩こう


ねむたげに閉じた

睫毛のさきに

宿す夜露の

そのまろみ


夜を歌おう

夜を歌おう


煙草を揉みけし

栗の花ゆれて

風に鳴る音()

聞き入るために


夜を歩もう

夜を歩もう


朝のステップは

カッコウのため

昼のステップは

白猫のため

夜のステップは

この僕だけのために


たなごころにある

紫陽花は

明日への道標に

落としてきた


明日をたどろう

明日をたどろう

気分のままにこぼれた色を

心変わりの可笑しさを


射干玉の蝌蚪

水田の銀波

闇のはざまに

抱かれるひとの

吐息も朝は

オパールの彩。


(おわり)




「雪しぐれ

夜半にみちゆく

しづけさに

ひとりごちつつ

花おきかへて」


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昔にまして花が好きです。

ふと自分に帰るときに花を生け替えます。今夜は雪、みぞれになるそう。

静かな時間が訪れそうです。

「稲妻の落ちてあかるる気配なくこころばせあり叢雨の闇」


秋の台風が近づく中、宵闇の中でぴたりと離れない人影。飽きることなくお互いを貪り、味わう気配がひどくなる雨の闇の中で微かに伝わる。


不意に稲妻が空から落ちるが、2人は離れない。そしてまた、ひどくなる雨が2人の立てる物音や息遣いをかき消す。


秋のなり初めに見かけた艶のある夜の出来事。