神奈川県藤沢市
創作手打ちほうとう
両親から継いだ山梨名物「ほうとう」を
神奈川・藤沢で二代目がリニューアル
街道沿いに忽然とあらわれる、プラネタリウムや劇場もある、湘南台文化センター
●山梨名物の「ほうとう」がなぜ神奈川に?
「ほうとう」と言えば、山梨(甲州)の郷土料理として知られていますが、インターネットのグルメサイト「食べログ」で、ほうとうランキングのベストワンに選ばれた店が神奈川県藤沢市にあると聞いて、さっそく訪ねてみることにしました。
藤沢市は、有名な江の島(江ノ島)や、片瀬・鵠沼・辻堂海岸など、ヨット、サーフィン、ボードセーリング、ビーチバレーなど、日本におけるマリンスポーツの発祥の地ともいわれ、来年に延期とされた2021東京オリンピックではセーリング競技の開催地に予定されています。年間約1200万人とも言われる人が訪れる湘南随一の観光地です。
しかし、今回訪ねる藤沢市北部の湘南台、六会地域は、江ノ島などの海岸部からはやや離れた内陸部。
海の湘南のイメージや雰囲気はありません。
湘南台駅周辺を歩いてみると、小田急江ノ島線、相鉄いずみ野線、そして横浜市営地下鉄のターミナル駅の湘南台駅を中心に、近くには有名な慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と文教大学湘南キャンパス、さらに湘南台から一駅先の六会には日本大学湘南キャンパスがあり、国道467号線沿いには巨大な地球儀を模したプラネタリウムのドームなど現代アート的な斬新なデザインの湘南台文化センター・市民シアターがありました。
湘南台駅は小田急(江ノ島線)、相鉄(いずみ野線)、横浜市営地下鉄と接続して、3つの路線が交わる湘南台は東京・横浜へのアクセスも良く、いすゞなどの自動車工場や研究所などが誘致され、一方では畑や田んぼなども多く田園都市といった印象の町です。
●「ほうとう」は信玄の陣中食で武蔵各地に広まった
藤沢のほうとう専門店「天然創作料理とほうとう・元祖へっころ谷」は、湘南台から小田急江ノ島線で1駅の六会日大前駅のほど近くにあります。
店名の「へっころ谷」とは、「山奥のへんぴな場所」という意味あいを表現したものという説明が同店のホームページに説明がありますが、国道添いに各種チェーン店が建ち並ぶなかにあって木造の古民家風の外観はひときわ目をひく個性的な外観です。
「ほうとう」は、広辞苑によれば、「生のうどんとカボチャなどの野菜を味噌で煮込んだ料理。また、この料理に使う生のうどんのこと。山梨県の郷土料理」とあり、漢字では「餺飥(はくたく)」と書くとあります。しかし、これまで各地の名物を取材するなかでは、「ほうとう」に似た鍋・煮込み料理としては、埼玉県秩父市の「おっきりこみ」、深谷市の「武州・煮ぼうとう」などもありました。深谷の「煮ぼうとう」は、特産の深谷ネギを出汁と醤油で煮込んだもので、深谷出身の明治の実業家・渋沢栄一が好んで食べていたと言われています。
「ほうとう」は奈良時代に中国から伝わり、戦国時代になって武田信玄が仏教僧からその製法を教わり、戦での陣中で食べる料理に採用したことから、これが信玄が戦の陣を張った各地の農民などに伝わって、山梨はじめ埼玉、群馬など、旧国名の武州・武蔵の国の各地に郷土食として伝わったようです。
●手打ちと安心素材にこだわった創作ほうとう
「もともと両親が山梨出身で藤沢に出てきてほうとうの店を始めたのが始まりで、私は二代目です」と語るのは、「元祖へっころ谷」の店主の古屋賢悟さん。
20代の前半に両親の営むほうとうの店で働き始め、やがて両親が別の場所で店を開くことになったため、店の経営を引き継いで15年、店を手伝い始めてからは25年になるといいます。ほうとうは、小さい頃から両親が働く店で粘土遊びのようにして覚えていたといいますが、自身で麺を打ち出汁をひくようになってはじめて、その難しさに気がついたと言います。以来、古屋さんは、両親のふるさと山梨のほうとうを食べ歩くと同時に、手打ちのほうとうを極めていきました。
「山梨はもともと山の中なので、塩がとれないこともあって塩が入っていないことがありますが、塩は麺にコシをだす役割があるので、ウチではミネラルを多く含んだ瀬戸内の天然塩を使って、コシともちもち感がでるように毎日手打ちの麺を提供しています」
最近は山梨でも、手打ちほうとうは少なくなっているそうですが、あくまで手間も時間もかかる手打ちにこだわり、材料の小麦なども、無味無臭の最近の小麦粉ではなく、古くからの在来の香り豊かな小麦粉2種類をブレンドし、身体を酸化させないという活性水を用いてこね上げ、出来上がった生地を一晩以上寝かせることでもっちりとした食感と熟成したうま味を出すことを心掛けているのだと古屋さんは言う。
同店のほうとうは、山梨で一般的な味噌仕立てでカボチャやニンジンなどを煮込んだスタンダードなものの他に、豆乳や坦々スープなど、さまざまなバリエーションのほうとうも創作しています。野菜や味噌も、自ら近隣の畑で無農薬の有機野菜づくりを行い、醸造や発酵を学んで自家製の味噌までつくるほどにこだわっています。そうした天然素材を活かした創作料理にも取り組んでいると、そのこだわりを語ってくれました。
さっそく同店イチオシの「ほうとう御膳」を注文。ほうとうは、鍋でなく丼で供されますが、ミニとろろごはん、麻炭こんにゃくのぬた、香の物、サラダなどの小鉢などがついた定食メニューです。
注文して15分ほどして出てきた「豆乳ほうとう」は、アツアツの豆乳をベースにしたクリーミーでコクのあるスープが、もちもちでコシのある太めの麺に絡んで、通常のほうとうとはひと味違った風味です。すべてに健康志向の素材にこだわった、どこにもないオリジナルのほうとうは、身体に優しいばかりでなく、とても美味しい料理に進化していました。
湘南台文化センター
「森の中に浮かぶ宇宙」をテーマにした建築家長谷川逸子の設計による湘南台文化センター。水の流れる広場やプラネタリウムのあるこども館と市民シアターなど、コンサートや各種の催しが開催されている。
国道沿いから見える丸いドームが印象的。斬新なデザインの湘南台文化センター。
ノーベル賞受賞者の住む町?
湘南台駅に飾られた横断幕。
ノーベル賞を受賞した吉野彰さんは藤沢市在住のようだ。
六会日大前駅
小田急(江ノ島線)の六会日大駅の右手に見えるのは日本大学湘南キャンパス。
日大生物資源科学部の博物館には、ホワイトタイガー、日本産トキの剥製や、全長9mのクロミンククジラなどが展示されており、一般の人も見学できる。公開日等はホームページで確認を。
電話:050-5597-7847










