花
ずっと前から思っていたよ。
僕が姉さんより先に生まれていたら、あんなに大威張りさせないのに。
もっとお金持ちの家に生まれていたら、高いグローブを買ってもらえたのに。
もう少し背が高かったら、もっと堂々と女の子をデートに誘えるのに。
それに、もう少し頭がよかったら、あの娘と同じ学校へ行けたのに。
ある日花を見ていてきづいたよ。
それはとてもささいなことだったんだ。
あの花はとても背が高くて、色は紫で、ところどころにピンク色が混ざってる。
この花はとても小さくて、他の草に紛れて咲いているから、うっかり踏んづけてしまいそう。
植物園で見たバラの花は、女の人の名前が付けられていて、高貴な貴婦人みたい。
そうかと思えばサボテンの花は、数年に一回しか咲かないっていう。
なんてそれぞれちがうんだろう。
それなのに、花は花ってひとくくりにしていた。
ああ、なんて僕はうっかりしていたんだろう。
だって僕ら人間だって、こんなにちがうじゃないか。
おとなとこども。
おとことおんな。
東洋人や西洋人。
お金持ちと貧乏人。
僕らはこんなにもちがっているって思っていたのに、
宇宙から見たら、僕らは同じ人間だった。
ひとくくりの、地球人という生物。
人間の世界はこんなにも、人それぞれちがうのに、
この地球には、こんなにもたくさんの人生があるのに、
すぐとなりのやつと、比べてばかりいた。
小っちゃいぞ。
まだまだ小っちゃいぞ。
高い丘の上から、見下ろしてみよう。
そうしたらこの世界には、まだまだ気づいていないことが、
たくさんあるんだよ。