「私を悩ませるのは、フットボールをすることを忘れてしまったチームが、それにもかかわらずすべてを勝ち取ることだ」ヨハン・クライフ
◇
サッカーを表現する専門用語のなかに、「アンチフットボール」という言葉がある。この言葉に厳密な定義はなく、国によってニュアンスが変わる可能性があるし、受け止める人によっても抱く印象は変わってくるだろう。ピッチに乱入したサポーターに対して使っても、八百長をしたクラブに使っても、基本的に間違いではない。
ただヨーロッパの報道を見ていると、そういう使い方は稀で、「自陣に閉じこもって、ほぼすべてのエネルギーを守備に注ぐチーム」という意味で用いられることが多いように思う。
たとえばドイツ。
昨季のCL準決勝・第1レグにおいて、バルセロナがメッシの2ゴールでレアル・マドリーに快勝したとき、フランクフルター・アルゲマイネ紙はこんな見出しをつけた。
「メッシがレアルのアンチフットボールを罰した」
ただし、アンチフットボールという言葉がヨーロッパのメディアに溢れているかというと、そういうわけではない。資金力に乏しい下位クラブが、いくら守備的な戦い方をしても、アンチフットボールという感覚をヨーロッパの人たちは持たないだろう。資金力と質の高さを持ち合わせたチームが、攻める勇気を捨てたかのように自陣に引きこもったときに使われるのが一般 的だ。もちろん例外もあるが、本当のトップ・オブ・トップの戦いのみが対象になる。