9月13日の福井新聞に、敦賀商店街のささやかな取り組みが紹介されました。
9月7日から公開されている、映画「キャプテン・ハーロック」にあやかって商店街の活性化を図ろうという試みです。
実は敦賀市の商店街には、原作者の松本零士氏の手がけたアニメキャラクターの銅像が並び、「松本零士ロード」として観光客の写真スポットになっているそうです。
商店街には、「銀河鉄道999」と「宇宙戦艦ヤマト」の作品中の情景を描いた28体の銅像が並んでおり、「キャプテン・ハーロック」が関係するものが4体あるようです。
そのうち4体のうち、どれか1体を探して携帯などで撮影し、参加点で写真画像を見せれば割り引券や粗品進呈などの特典が受けられるということでした。
「ささやか」と書いたのは、商店街でこの企画に参加したのは9店舗のみで、商店街や市全体を巻き込んでの取り組みであるとはとても言えないと思うからです。
ちょうど世代にあたることもあるのですが、個人的にはもう少ししっかり取り組めばいいのに、と思いながら読みました。
出戻り組のこともあるのですが、敦賀商店街の松本零士ロードのことは、福井に戻って敦賀市を訪れるまで、まったく知りませんでした。
20年ぶりの福井を見ておこうと敦賀を訪れ、敦賀駅から気比神社にむかってぶらぶらと商店街を歩いていた時に、たまたま目に入ってきたのがきっかけにすぎません。
うれしくなってバシバシ写真を撮ってしまった1人ではあるのですが、まず思ったのが、「敦賀市って松本零士の出身地だっけ?」という疑問です。
そんな話は聞いたことがなく、実際、松本零士氏は福岡出身で、敦賀市とは縁もゆかりもないようです。
調べてみると、過去の中日新聞 に答えがありました。
記事によると、これらは1999年に行われた、敦賀港開港百周年記念事業の一環として、市が整備したものだそうです。
敦賀市の観光振興課によると、松本零士作品を選んだ理由を次のように説明していました。
「敦賀港が古くから貿易や交通などで重要な役割を担ってきたことや、明治時代に欧亜国際連絡列車が東京から同港まで運行されていたことなどから、港の街と鉄道の街の連想で、鉄道と船が登場する銀河鉄道999と宇宙戦艦ヤマトの像を設置することになったんです。」
松本零士氏の反応はというと、こう語っています。
「レールウエー(鉄道)や船が行き来するということは、いろんな場所に、人と人とのつながりが生まれるということ。敦賀市のモニュメントには、そのつながりがもっと広がっていってほしいとの思いを込めました。」
「私だけでなく、いろんな漫画家、歌手、俳優さんなど、さまざまな人たちが各地域にモニュメントを造れば、こんなに楽しいことはないと思います。」
港と鉄道の組み合わせなどありふれており、敦賀開港100周年が1999年に重なるという偶然に便乗した感はありますが、なんと広い心で許して下さったかと感動してしまいました。
はたして敦賀市は、松本零士氏のご厚意をちゃんと活かせているのだろうかと思うと、少々疑問を感じます。
実をいうと、松本作品のコラボで言えば、2010年に「宇宙戦艦ヤマト」が実写化という絶好の機会がありました。
アニメの実写ものとしては成功を収めており、公開初週の映画観客動員ランキングでは、ハリーポッターを押さえて初登場第一位を記録しています。
にもかかわらず、「ハーロック企画」の仕掛け人の、「せっかく作った像を生かし切れていないと感じていた。」との言葉通り、敦賀市はそうした機会を逃してきたようです。
いみじくも福井新聞の同ページには、敦賀市商工会議所の会頭が、河瀬一治敦賀市長に長期原発停止による地域経済・雇用対策を要望する様子が掲載されていました。
どうやら敦賀市の商工会議所には、映画に便乗して街の活性化を図るという発想はないらしく、国や市に経済対策を要望するぐらいしか考えていないように見えてしまいました。
鳥取県境港市の水木しげるロードを見るまでもなく、アニメを使った町おこしはそれほど珍しくありません。
ただ、有名作品を持ってきたにしては、敦賀市ほどやる気を感じない自治体もあまりないように思うのでした。
設置のいきさつはよく分からないのですが、地元の協力の薄さを考えると、市の主導で行われたような気がします。
作るだけ作ってほったらかし、効果的な観光PRにも街の活性化にも活かせていない所など、まさに「お役所仕事」の見本であろうと思います。
実際、敦賀に降り立つまでは、「港と鉄道の街」というキャッチフレーズや、松本零士ロードについても全く知りませんでした。
敦賀市議会の議員の方も、ブログやフェイスブックで「ハーロック企画」にふれているのはお一人のみというありさまです。
敦賀祭りにミッキーマウスを招致するのもいいですが、もう少し足腰のしっかりしたまちの活性化や観光PRを考えてもよさそうな気がします。
個人的には、「ハーロック企画」の参加店の店主の方が「既存の像を生かすことが大事。」と述べていましたが、その通りだという気がします。
何も松本作品に特別な思い入れがあるわけではないのですが、すでに税金を使ってたくさんの銅像を作ってしまった以上、市としての責任があろうかと思います。
PR活動やタイアップ事業などはともかく、アニメによる町おこしで成功している自治体からノウハウを学んで活用することぐらいはできそうなものです。
また、松本零士氏の出身地の九州市と提携したり、姉妹都市を目差したりといったこともできそうです。
ただ、今のところそうした視点を持った政治家は見当たらず、残念ながら、宝の持ち腐れになりそうな気がするのでした。
※ 個人的には、北陸新幹線のとりあえずの終着駅が敦賀になることから、アンドロメダ駅っぽい駅校舎や駅前空間を演出してみたら、話題作りとしても面白そうな気がするのですが・・・。
ともあれ、次々と実写化されていることから分かるように、松本作品はそれなりに大きなポテンシャルを持っており、下手な経済対策よりもよほど効果はあろうかと思います。
おそらく、今後松本作品が注目されるとすれば「銀河鉄道999」であり、アベノミクスが成功して景気が良くなれば、ますますその可能性は高まるものと思われます。
せめてその時、敦賀市としてどうするのかといったことは考えてみてもよい気がするのでした。