10月6日

この日は医大で主人の病状を聞く日。
怖いけど、どんな結果であれ家族皆んなで
主人を支えていく。
主人が一番辛いはず。
弱音も吐かない主人が一番苦しんでるはず。
何がなんでも頑張ってみせる。
今日は何を言われても絶対泣かないって
決めていた。

診察は11時半から。11時には待合室で
待っていた。
待ってる間、足の力が抜けて
心臓が止まりそうな感覚になって
何度も苦しくなった。
主人と二人してトイレばっかり行っていた。
1時間ほど待って名前が呼ばれた。
主人に「行くぞ!」と言われて
診察室に入った。
この日どんな説明を受けて、どんな話を
したのかはっきりと覚えていない。
記録しているノートにも詳しく書いて
なかった。先生からもらった紙を見ても
説明してもらった言葉や難しい言葉が
書かれているけど意味が分からない言葉も
並んでいる。頭にほぼ入ってなかった。
本当ポンコツな私。

診察の結果、ステージ4。リンパに転移。
胸膜播種あり。
治療法は手術は出来ません。放射線も無理です。
遺伝子検査はマイナスでした。
出来る治療は免疫療法か緩和ケアです。
他人事の様に淡々と話された。
何?何の事?何なん?ステージ4って何?
緩和ケアって終末期の?馬鹿にしてんの?
そんなに簡単に緩和ケアとか言って欲しくない!
とか思ってると、目から涙がこぼれ落ちた。
こんなに真面目で家族思いで優しくて
仕事も一緒懸命に取り組むし
こんなにも格好良い主人がステージ4の癌って。
ふざけてんの?
しかも胸膜播種は治療方法が無いって。
こんなに医療が進歩してるのに
どうにかしてよ!
そんな簡単に治療法が無いって言わんといて…
って腹が立って仕方が無いのと、絶望と
不安と怖さで私の目からポロポロ涙が
溢れて止まらなくて、拭いても拭いても
溢れ落ちる。

そして先生が、治療に希望を
持たす訳じゃないですが治験もあります。
治験の話を聞いてみますか?と言われ
治験って何?どうしたら良いん?とか
思って主人の顔を見たら主人は
「僕は今直ぐに治療をして欲しいです。
治験をするまでに治療がまた遅れてしまうけど
大丈夫なんですか?」
って先生の顔を真っ直ぐ見つめ、気丈に
聞いていた。
私は声をあげて号泣した。
先生はとてもびっくりした顔をされ
「別室で看護師と話をしますか?」と
聞いてくれた。
だけど私は首を振った。今は主人のそばに
いないといけない!そう思ってた。
あの時看護師さんと話したら良かったのかな
って何度も思う事はあるけど、あの時は
何を言われても素直に言葉を受け入れる事が
出来なかったと思う。

主人からの問いに先生は
「」治験をするにあたってまた検査で
2週間ほどかかりますが、そこは
全然大丈夫です」と言われ
主人は治験の話を聞いてみますと返事をしていた。

診察室を出て直ぐ、主人は私に
「泣くな。大丈夫やから泣くな」
そう言って私の顔を隠す様に私の前を歩き
待合室から離れてから横に並んで歩いた。

治験の話、検査の予約。
また不安で仕方なかった。