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なんて素敵な経験だったんでしょう・・ペーター・コンヴィチュニー演出の二期会「皇帝ティトの慈悲」ドキドキ


指揮:ユベール・スダーン
演出:ペーター・コンヴィチュニー
ティト(ローマ皇帝):望月哲也
ヴィッテリア(先の皇帝ヴィッテリオの娘):林正子
セルヴィーリア(セストの妹でアンニオの恋人):幸田浩子
セスト(ティトの親友でヴィッテリオを愛する):林美智子
アンニオ(セストの友人でセルヴィーリアを愛する):長谷川忍
プブリオ(近衛長官):谷茂樹
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京交響楽団
モーツァルトの中ではイドメネオ同様、オペラセリアで上演機会が多いとは決して言えないこの作品。
世界一忙しい鬼才ペーター・コンヴィチュニーの手にかかるといったいどんな感じになるのだろうかととても楽しみにしていました。
日本でもコンヴィチュニー演出の「トリスタンとイゾルデ」「魔笛」が上演されたことがあります。
ただし海外の有名劇場の来日公演でチケット代も高く、これを観る機会が無かったのです・・・しょぼん
ZUSTÄNDE WIE IM ALTEN ROM
(この有り様では古代ローマと変わらない)
と白い緞帳に文字が書いてある。
序曲が始めると照明が消え、音楽も消える「おーい照明はどうしたんだ!」との叫び声。照明がまたついて演奏が始まると再び照明が消える「おーいいったい今日の照明はどうしたんだ!」と再び叫び声。
客席からは笑いが起こる。
そして序曲は始まった。
第一幕は白を基調にした回り舞台。
ヴィッテリアは自分が皇位に就くか、少なくとも皇后になることを望んでいた。
そこで自分に恋するセストにティト暗殺をそそのかす。
(今回の演出ではこの場面でティトはこの様子の詳細をしっかりと見定めている。)

舞台上には公衆トイレがあり、「殿方」との文字が見える。

出演者は実に細かい動きは指定されているようで、ヴィッテリア役の林正子さんは嫉妬に狂うあばずれ女を好演!(メークも怖い)。声の艶といい、張りといい申し分がない。
セストの林美智子さんもヴィッテリアにそそのかされ、親友の暗殺未遂まで至る心情の表現が実に巧み。

セルヴィーリアとアンニオはまるでおままごとの夫婦のように仲むつまじく食事の準備をしている。
幸田浩子さんのセルヴィーリアはどこかコメディチックで「ポパイ」のオリーブのよう。
アンニオの長谷川忍さんは初めて声を聴いたがなかなかよいメゾ。しかも美貌の持ち主。

「ティトの慈悲」という題名だが舞台上のティトは必ずしも慈悲深い人間ではない。セルヴィーリアを犯そうと試みたりする野性的な一面も・・・単なる「いい人」としては描かれていないのだ。

セストが暗殺を考えるとき、「死」を暗示するバンダ クラリネットが舞台に登場。この演出からコンヴィチュニーがいかにスコアをよく読みこんでいるかもわかる。

アンニオとセルヴィーリアが恋人同士であることを知ったティトはセルヴィーリアを皇后にすることを諦め、ヴィッテリアを皇后にすると宣言する。
これを知ったヴィッテリアはセストの暗殺計画を止めようとするが時すでに遅い。
セストが宮殿に火を点けると舞台上のあちこちに炎が自動点火され、煙があがり照明が赤くなる。
剣を持ったセストが影武者の混じった4人のティトの一人を刺し殺すが、本物のティトは生きていた・・・。
一幕終了。
休憩中、ホワイエに出ると皇帝ティトが手を振って闊歩していた・・・コンヴィチュニーってなんて面白いことを考えるの!!
そのまま1階客席の最前列に座ったティトは2幕でこの席から歌い始める。
逆に火事騒ぎで顔に煤をつけたマエストロ、ユベール・スターンが舞台上から登場。
呆気に取られるうちに2幕は始まった。
舞台は焼け野原に・・・
出演者も民衆(合唱団)も煤だらけ。民衆の中に混じっていた子供二人が客席にティトを見つけ、「テイート!ティート!」と騒ぎ出す。
1階席の人は1階でどんなことが起こっていたのかわかったはずなので、かなり笑いは起こっていたが4階席の我々には何が起こっていたのかちっともわからなかったのが残念・・・。
おかしかったのは一度、暗殺で死んだ(?)はずのティトに心臓ラブラブが移植され、生き返ったティトはまるで“ロボット・ティト”!!!
突然アリアを韓国語、日本語、フランス語、ドイツ語でハチャメチャに歌いだす音譜
セストをはじめとする民衆が罪人らしく頭にカブリモノをして登場。
「ガオーッ!」という吠え声も勇ましくかわいい仔ライオンが二匹登場(これは何を暗示しているのだろうか?)
セストにじゃれついたりしている最中、ヴィッテリアが自らの罪を告白。
ティトはこれを許す。
カーテンコールで再び、序曲が演奏され出演者が面白おかしい振りつきで登場してくる。
ユベール・スダーンのモーツァルトはやっぱり素晴らしい!!
2週間前の「トゥーランドット」でもそうだが今回の東京交響楽団の音楽は非常に優れていた。
今は昔と違ってオペラと言えば「○△フィル」ではなく、東京交響楽団や新日本フィルのオペラの演奏がとても充実している。
ペーター・コンヴィチュニー演出に関しては賛否両論だろう。
純粋にオペラセリアを観たかった人には不満を持つ方もいただろう。
モーツァルトの作品の中ではこれほど上演機会が少ない作品を抱腹絶倒の物語に仕立て直したのは、「読み替え」ではなく、彼の徹底した、そして卓越した「読み込み」作業にあるのだと私は思う。
彼ほどの大物になるときっと演出助手が来日して本人が来日しないなんてこともあるのだろうが、プブリオ役の谷茂樹さんから終演後、「本物が来日して細かい稽古つけて行きましたよ。」とお聞きしました。
動きの多い演出でしたが日本人キャストはよくこれに応え、歌えていましたニコニコ

二期会は昨年の「フィレンツェの悲劇」のように音楽的にも演劇的にも大いに満足できる作品を上演しているが、昨年11月の「さまよえるオランダ人」などのように不発な作品も送り出している。
次回、公演の「蝶々夫人」のチケットも当日ホワイエで思わず買ってしまった・・・二期会の未来に賭けたい。