ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団
トゥーランドット:ガブリエレ・シュナウト、カラフ:ヨハン・ボータ、リュー:クリスティーナ・ガラド=ドマス、ティムール:バータ・ブルチュラーゼほか

新国立劇場『神々の黄昏』で来日したガブリエレ・シュナウトにサインがもらいたくて実は公演当日ついつい買ってしまったDVDだった。奇怪な演出に話題が集まり賛否両論だったという話は聞いていた。伝統あるザルツブルク音楽祭はもはや超前衛演出の見本市と化しているらしい。

最後まで聴いてみて「リューの死」以降の音楽が今まで聴いていたものとは異なることに気が付いた。
「トゥーランドット」はプッチーニの死により「リューの死」の場面までしかプッチーニ本人は作曲できず、これ以降は彼の弟子F・アルファーノによって作曲されたものが一般的に上演されてきた。しかしこの演奏ではイタリアの現代作曲家ルチアーノ・ベリオによって補筆された版となっているそうである。

アルファーノ版に慣れてしまっているせいであろうか?トゥーランドットとカラフという超重量級の歌手が華々しく、声高に歌わないこのベリオ版には多少抵抗を感じる。実直に言えばもの足りない。

ガラド=ドマスはリュー、ヴィオレッタ、蝶々さんといったイタリアオペラのリリコのレパートリーを得意にしているだけに今回も説得力のあるリューを聴かせて見せてくれた。だが好みの問題であろうが彼女の容姿、声質はどうにも好きになれない。

スカラ座、浅利慶太演出の「トゥーランドット」が以前放送されたがこのトゥーランドット姫を歌ったのはアレッサンドラ・マーク。ドラマチックソプラノにはありがちな高音には難のあるソプラノで、その最高音は「叫び」ならぬ「唸り」にも似たもので、その限りなく「球」に近い体形も手伝ってつい笑ってしまった。
そこへいくとガブリエレ・シュナウトはメゾからキャリアをはじめたとは言え、強引にメゾを持ち上げたというタイプのソプラノではなく本当のドラマチックソプラノなのだと思う。
巨大な仮面の中から登場したトゥーランドット姫は地上10mはあろうかと思われる位置に登場。ここでかの有名なアリアを歌い始める。

ヨハン・ボータのヨーロッパでの活躍ぶりは有名であったが、今回その声を初めて聴いた。確かに立派な体躯・歌声ではあるのだけれど、歌も演技も一本調子な印象を受ける。

カリスマ指揮者ワレリー・ゲルギエフのプッチーニは初めて聴いたが、ウィーンフィルとの相性もあるのであろうか?このオペラの壮大なスケールを現すには至らなかった気がする。
従来の版とは異なる版を観れたという充足感こそあるが‥。