以前から観てみたいと思っていたコヴェントガーデン盤『ファルスタッフ』だったが、BBC収録の映像がNHKで放送されることも多く「いつかBSで放送されるのではないか?」と思うとなかなか手が出なかった。他にも輸入盤で日本語字幕がないことも理由に挙げられるがついにDVDを買ってしまった。
「サー・ジョン・ファルスタッフ」という好色だけどどこか憎めない老騎士を余裕しゃくしゃくで演じるのは熟練したヴェルディバリトンの技だと思っていたら、そうでもないらしい。
ミラノスカラ座がヴェルディ没後100年にこの作曲家ゆかりの地、イタリア・ブッセートのヴェルディ劇場で行った公演でも無名に近かった「アンブロージョ・マエストリ」という30歳そこそこのバリトンがこの役を歌い、一気にスターダムにのしあがった。
コヴェントガーデン歌劇場でタイトルロールを歌うはこの国出身の世界に誇るバリトン:ブリン・ターフェル。
意外に一流のオペラ歌手が輩出されないイギリス出身で人気も実力も世界のトップレベルにある彼にこの役が回ってきたのは、祖国出身の彼の人気にあやかってというのもあるであろう。意外な収穫と言うべきであろうかまだ30代と思われるターフェル演じるこの老騎士には全くと言っていいほど違和感がない。
演出は昨年のスカラ座来日公演「マクベス」で抜群に色彩の美しい装置・衣装の舞台で演出をしたグレアム・ヴィック。今回も同じ布陣なのか装置・衣装の色彩はどこか似ているし、「マクベス」同様極めて美しい。
若き日にオペラブッフォを手がけ失敗して以来、オペラブッフォを手がけることのなかったヴェルディが人生の最後に手がけた珠玉の名作だと思うが、歌の構成もオペラブッフォの名人ロッシーニの作品と同じく「アンサンブルオペラ」となっている。
アリーチェ役のバルバラ・フリットリ、クイックリー夫人役のマンカ・デ・ニッサはスカラ座盤と全く同じである。アリーチェ(リリコ)、その娘ナンネッタ(リリコレッジェーロ)、メグ・ペイジ(メゾ)、クイックリー夫人(アルトに近いメゾ)があうんの呼吸で絶妙のアンサンブルを聴かせるところにこのオペラの面白さがあるが、ナンネッタ、メグがいまひとつ。ナンネッタは軽く伸びのある美声が求められるが、見た目が少し太めで声質もナンネッタにしては少々重め。
これを聴くとスカラ座盤のナンネッタ:インヴァ・ムーラ、メグ:アンナ・カテリーナ・アントナッチがいかに適役だったかがわかる。(ちなみにスカラ座盤でナンネッタの恋人フェントンを歌うフアン・ディエゴ・フローレスもロッシーニテノールの逸材だけあって軽いテノール:フェントンには非常に適したものだった。その端正な容姿も‥)
他にもジュリーニ指揮レナート・ブルソンがタイトルロールを歌うコヴェント・ガーデン旧盤やレヴァイン指揮でアリーチェ:フレーニ、ナンネッタ:ボニー、メグ:グラハム、クイックリー夫人:ホーンという豪華キャストのメトロポリタンオペラ盤もあるが、決定盤はヴェルディ劇場でのスカラ座盤のように思う。これは配役の妙としか言いようがない。
メトロポリタンオペラ盤はゼッフェレッリ演出でオーソドックスだか、豪華過ぎてこのことがかえって邪魔になっているように感じた。
ターフェルの歌うグレアム・ヴィックの演出はト書きどおりの演出を踏襲しつつ、余計なものをそぎ取った洗練されたものであった。
第3幕の森の場面の美しさ、妖怪に扮した出演者が身に付ける衣装のユニークさといったらない。最終場面「人生全て冗談」と歌い上げるシーンはファルスタッフに続き、次々と歌に加わる出演者たちが黄色く長い布を手に取っていく。色彩の鮮やかさが目に飛び込んでくる。初演の頃の演出を敢えて再現したスカラ座盤も捨てがたいが、演出ではグレアム・ヴィック演出を決定盤に挙げよう。
6月27日(日)では新国立劇場でジョナサン・ミラー演出「ファルスタッフ」を観ることができる。オペラはもとより演劇界でも定評のある重鎮ミラーがどのようにこの作品を調理するか非常に楽しみである。
「サー・ジョン・ファルスタッフ」という好色だけどどこか憎めない老騎士を余裕しゃくしゃくで演じるのは熟練したヴェルディバリトンの技だと思っていたら、そうでもないらしい。
ミラノスカラ座がヴェルディ没後100年にこの作曲家ゆかりの地、イタリア・ブッセートのヴェルディ劇場で行った公演でも無名に近かった「アンブロージョ・マエストリ」という30歳そこそこのバリトンがこの役を歌い、一気にスターダムにのしあがった。
コヴェントガーデン歌劇場でタイトルロールを歌うはこの国出身の世界に誇るバリトン:ブリン・ターフェル。
意外に一流のオペラ歌手が輩出されないイギリス出身で人気も実力も世界のトップレベルにある彼にこの役が回ってきたのは、祖国出身の彼の人気にあやかってというのもあるであろう。意外な収穫と言うべきであろうかまだ30代と思われるターフェル演じるこの老騎士には全くと言っていいほど違和感がない。
演出は昨年のスカラ座来日公演「マクベス」で抜群に色彩の美しい装置・衣装の舞台で演出をしたグレアム・ヴィック。今回も同じ布陣なのか装置・衣装の色彩はどこか似ているし、「マクベス」同様極めて美しい。
若き日にオペラブッフォを手がけ失敗して以来、オペラブッフォを手がけることのなかったヴェルディが人生の最後に手がけた珠玉の名作だと思うが、歌の構成もオペラブッフォの名人ロッシーニの作品と同じく「アンサンブルオペラ」となっている。
アリーチェ役のバルバラ・フリットリ、クイックリー夫人役のマンカ・デ・ニッサはスカラ座盤と全く同じである。アリーチェ(リリコ)、その娘ナンネッタ(リリコレッジェーロ)、メグ・ペイジ(メゾ)、クイックリー夫人(アルトに近いメゾ)があうんの呼吸で絶妙のアンサンブルを聴かせるところにこのオペラの面白さがあるが、ナンネッタ、メグがいまひとつ。ナンネッタは軽く伸びのある美声が求められるが、見た目が少し太めで声質もナンネッタにしては少々重め。
これを聴くとスカラ座盤のナンネッタ:インヴァ・ムーラ、メグ:アンナ・カテリーナ・アントナッチがいかに適役だったかがわかる。(ちなみにスカラ座盤でナンネッタの恋人フェントンを歌うフアン・ディエゴ・フローレスもロッシーニテノールの逸材だけあって軽いテノール:フェントンには非常に適したものだった。その端正な容姿も‥)
他にもジュリーニ指揮レナート・ブルソンがタイトルロールを歌うコヴェント・ガーデン旧盤やレヴァイン指揮でアリーチェ:フレーニ、ナンネッタ:ボニー、メグ:グラハム、クイックリー夫人:ホーンという豪華キャストのメトロポリタンオペラ盤もあるが、決定盤はヴェルディ劇場でのスカラ座盤のように思う。これは配役の妙としか言いようがない。
メトロポリタンオペラ盤はゼッフェレッリ演出でオーソドックスだか、豪華過ぎてこのことがかえって邪魔になっているように感じた。
ターフェルの歌うグレアム・ヴィックの演出はト書きどおりの演出を踏襲しつつ、余計なものをそぎ取った洗練されたものであった。
第3幕の森の場面の美しさ、妖怪に扮した出演者が身に付ける衣装のユニークさといったらない。最終場面「人生全て冗談」と歌い上げるシーンはファルスタッフに続き、次々と歌に加わる出演者たちが黄色く長い布を手に取っていく。色彩の鮮やかさが目に飛び込んでくる。初演の頃の演出を敢えて再現したスカラ座盤も捨てがたいが、演出ではグレアム・ヴィック演出を決定盤に挙げよう。
6月27日(日)では新国立劇場でジョナサン・ミラー演出「ファルスタッフ」を観ることができる。オペラはもとより演劇界でも定評のある重鎮ミラーがどのようにこの作品を調理するか非常に楽しみである。