さて、読書の秋ということで読んだのはこの本。
現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)/筑摩書房

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著者は、「日本資本主義の父」、「実業界の父」と呼ばれている渋沢栄一。
彼が設立に関わった企業は、みずほ銀行、王子製紙、東京海上火災、日本郵船、東京電力、東京ガス、帝国ホテル、サッポロビール、JR等の様々な分野の約470社。さらには、日本商工会議所や東京証券取引所等の設立にも中心的な役割を果たし、日本の近代資本主義の形成に大きく関わっている。
彼が生涯に通じて貫いた経営哲学が、「利潤と道徳を調和させる」ことである。
「論語」と「商才」の共通点とは、世間とのうまい付き合い方。しかし、これも「千里の道も一歩から」である。成し遂げる大きなことも結局は微々たるものを集積したもの。どんな場合でも、些細なことを軽蔑することなく、勤勉に、忠実に、誠意をこめて完全にやり遂げようとすべきであるとしている。
また、貧富の差や競争についても国家の豊かさのためには必要であると述べている。むしろ、両者の関係を円満にし調和を図ろうと努力するとしている。つまり、何かを一生懸命行うには競走(他人を妨害することでなく、努力や工夫をし、知恵と勉強とで他人に打ち克つこと)が必要であり、
非現実的な平等を唱える、格式張った文字を並べ立てた儀式のような形骸化に陥った道徳観念には有用さを見出すことができないのである。
江戸時代の武士と商人は極端に対極の考えをしていたようである。武士は人としての道や社会道徳を最も大事なものとし、経済力や地位を取るに足らないものとし、一方の商人は全く逆の考えをしていた。この対極の考えを調和させるものが本書で述べている考えそのものである。
個人においても、企業においても、国家においても、世界においても、「信用」こそ最も大きな威力を発揮するものであり、あらゆる全てのものの基盤となる。
明治新政府が欧米列強の国々と対等に渡り合っていく上で、利潤の追求と社会道徳の実践の両方がどうしても必要であった。武士の時代が終わっても、それまでの商人たちが好き勝手にするのではなく、旧幕府の人間として仕えた武士である渋沢が日本の近代資本主義のシステムを整えたからこそ、それ以後の日本の急速な発展をもたらしたのだろう。




