大人でも真剣に「この言葉を伝えたい」と思いながら言葉を発する時、生まれて初めての外国語の言葉だとしても、なんだかテレパシーのように瞬時にイメージが伝わるときがあります。音の抑揚や表情しぐさから。前後の文脈、場面、ジェスチャーなどなどから。

 

とくに母国語の場合、方言や若者言葉など知らない言葉でも、意味が推測できますよね。また「音の抑揚やしぐさなどが違うと、まったく同じ言葉でも、まったく違う意味」ということが、日本語でも、ありますよね。言葉そのものの意味は、文字通りではなく、抑揚などの言い方や表情しぐさでも変わるのです。そして、抑揚などの言い方や表情しぐさから、意味を類推できるのです。

 

その未知の言葉の意味を類推する力が小さければ小さいほど強いのです。2歳児は、あらゆる言語をそのまま受け止めることができる時期です。生まれつき人間の脳は多国語に適応できるようにデザインされているとも言われています。2歳児の場合、ネイティブ並みに母国語を介さず、そのまま外国語が理解できてしまう時期なのです。外国語をそのまま理解できる脳が作られる最適な時期です。

 

たとえば、2歳児に向かって、真剣に、

Let me call the roll.

When I call your name, please say, Here.

と言って

名前を呼ぶと

驚くべきことに、Here!と答えてくれます。

Here と言ってほしいのだなということがわかるんです。

 

たとえば、物を指さしながら、

What's this?

と聞くと、

ちゃんと、答えてくれます。

ただし、日本語ですが。

 

「これ、なぁに?」と聞いてるんだな、ということがわかるんです。

 

What animal jumps?

と聞いても、2歳児は、動物の絵を指をさして答えてくれます。

 

これは、楽しくてやめられません。

 

ちなみに、かの有名な国語辞典の編纂者である金田一京助がアイヌの言葉を調査したときには、まず最初に、アイヌ語では「これは、なに?」 をどういうのかを調べ、そのあと、いろいろなものや事柄について「これは、なに?」と次々と聞いていくことで、アイヌ語を調査研究し解明していったそうです。

 

大人でも、その言語を話す以外に生きていくすべがない場所に住むと、その言語を話せるようになるそうです。人間の脳は、多言語を習得できるようにデザインされているそうなのです。生きていくために生まれつき備わっている能力なのです。

 

しかし、周りに、その言語を話す人がまったくいない場合、つまり、母国語でもなく公用語でもない言語は、習得が大変難しくなるのです。周りに一人もその言語を話す人がいなければ、習得する必要がないので、習得しない。そのように、人間の脳は、できているのです。だから、周りに一人も英語を話す人がいない環境で、英語ができなくても心配することはありません。英語を話す以外に生きるすべがない状況になったら習得してしまうのですから。