世界一の映画スターが、街角で本屋さんとぶつかった…

『ノッティングヒルの恋人』の魅力を徹底解説。ハリウッド女優と冴えない書店主の恋が織りなす、甘く切ないラブストーリー。音楽やキャラクター描写から見る、普遍的な愛の形とは?

ノッティングヒルの恋人

原題:Notting Hill

製作年:1999年(イギリス/アメリカ)

ジャンル:ラブロマンス/コメディ

監督:ロジャー・ミッシェル

脚本:リチャード・カーティス

音楽:トレヴァー・ジョーンズ

主題歌:エルヴィス・コステロ『She』

キャスト:ジュリア・ロバーツヒュー・グラント、ヒュー・ボネヴィル、エマ・チャンバース、ジェームズ・ドレイファス、リス・エヴァンス、ティム・マッキナリー、ジーナ・マッキー、and more…


『ノッティングヒルの恋人』のあらすじ/概要

ハリウッドの人気女優と冴えない書店主の恋の行方をジュリア・ロバーツ&ヒュー・グラント共演で描いたロマンティックコメディ。

ロンドン西部のノッティングヒルで小さな書店を営む男性ウィリアム(ヒュー・グラント)。ある日彼の店に、ハリウッド女優のアナ(ジュリア・ロバーツ)が訪れる。その後、ウィリアムは街角で偶然アナとぶつかってジュースをかけてしまい、近くにある自宅で彼女の服を乾かすことに。アナは不器用だが誠実な彼に惹かれ、2人は恋に落ちるが……。

脚本は後に「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」などを手がけるリチャード・カーティス。エルビス・コステロがシャルル・アズナブールの名曲をカバーした主題歌「She」も大ヒットを記録した。

映画.comより抜粋


『ノッティングヒルの恋人』の感想/レビュー/考察(ネタバレ含む)

映画『ノッティングヒルの恋人』は、シンプルで美しく、普遍的なラブストーリーである。平凡な書店主ウィリアム(ヒュー・グラント)と、世界的ハリウッド女優アナ(ジュリア・ロバーツ)の出会いは、日常と非日常がぶつかり合いながらも心地よい調和を生み出しています。そうこれは偶然という名の必然。

ロンドンのノッティングヒルという温かい街並みを舞台にしたこの物語は、愛がもたらす奇跡を信じたい人々に向けて描かれていると言えるでしょう。


ロマンス映画というジャンルにおいて、突飛や夢物語であることは、寧ろその魅力の一部であると個人的には思います。現実ではまずあり得ないような状況や展開が、スクリーンの中で一つの真実として描かれる…その瞬間に観客は、愛という普遍的なテーマに心を重ねていくのです。本作もその例外ではなく、「こんな恋があれば」と心の中で願わずにはいられない、そんな映画であります。

※個人の感想です


不釣り合いなふたりに、共感を見つける



ウィリアムとアナの関係性は、表面的には釣り合いが取れないように見えます。旅行ガイド専門の書店を営む(赤字経営)普通の男性と、女優として成功を収めているスーパースター。立場の違いは大きいけれど、それでも愛の力がそれを乗り越えていく様子は、この映画の魅力の一つです。


見た目も美しく、一見社会的大成功を収めているかに見えるアナの「私もただの1人の女性。ただ、好きな人に愛してほしいと思っている」という台詞には、彼女の内面の脆さと愛を求める純粋な気持ちが込められています。ウィリアムは、理想の英国紳士像を少しだけ崩したキャラクター設定ですが、戸惑いながらも真っ直ぐな愛情は、観る者に親近感を抱かせます。

個人的には、彼がバツイチであったり、元奥さんがインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)みたいな男と駆け落ちしたは兎も角、愛想を尽かされたなどのバックグラウンドが、更に共感に拍車を掛けます。


兎に角、時に幼稚で不器用であっても、それが人間らしさであり、愛のかたちなのです。


物語を彩る温かな脇役たち



ウィリアムの友人や家族、そして個性的すぎるルームメイトのスパイク(リス・エヴァンス)は、この映画のもう一つの大きな魅力です。時にエキセントリックだったりする彼らの温かさやコミカルなやり取りが、物語の土台をしっかりと支えています。特にスパイクの突拍子もない行動には笑わされつつも、彼の純粋さがどこか心地よい。


また、ウィリアムの姉ベル(ジーナ・マッキー)のエピソードや、夫婦として支え合う彼女達の姿は、愛の多様性を描き出していると言えるでしょう。彼らの存在がなければ、この物語は少し空虚に感じられたかもしれません。

くたびれたシンディ・ローパーみたいな妹のハニー(エマ・チャンバース)もいい味出してます。


音楽が奏でる、愛のメロディ



オープニングとエンディングで、エルヴィス・コステロの「She」が流れますが、この主題歌によって映画の持つロマンティックな魅力が際立っており、特にこの曲は、アナという女性の魅力と脆さ、そしてふたりの愛が持つ儚さを美しく象徴してもいます。選曲の妙が、映画全体の余韻をさらに深めていると言えるでしょう。

Elvis Costello - She


彼女は忘れられない面影

僕の喜び それとも後悔

僕の宝物 それとも高い代償

彼女は夏が奏でる調べ

それとも秋がもたらす肌寒さ

彼女は何にでもなりえる

たった1日の中で

彼女は美女 それとも野獣

大いなる渇望 それとも至福

彼女との日々は天国 それとも地獄

彼女は僕の夢を映す鏡

移りゆく流れにに浮かぶ微笑み

うわべでは計り知れない

本当の彼女は殻の中にいる


大勢に囲まれ幸せそうな彼女

その瞳はひそやかで誇り高く

誰にも涙を見せることはない

彼女は永遠に続かぬ愛

過去の影からやってくる人

僕が死ぬ日まで忘れられない人

彼女は僕が生きる理由

僕が生きてる理由そのもの

この先の長い日々を

見守りたい人

僕は受け止める 彼女の微笑みと涙を

そしてすべてを心に刻む

彼女の場所が 僕の居場所

僕の人生の意味 それが彼女

彼女…


これはオレの心歌っとんのかな?


夢物語だからこそ、心に響く



確かに、『ノッティングヒルの恋人』の物語は現実的ではありません。特にアナがウィリアムを再び訪ね、ふたりが結ばれるクライマックスは、ある意味で都合の良い奇跡のようにも思えます。しかし、ロマンス映画とは本来そういうものなのです。現実を離れ、愛の奇跡を信じさせてくれることこそが、その醍醐味なのではないでしょうか。


観る人によっては、この物語を「ありえない」と感じるかもしれません。それでも、主題歌の『She』然り、その中に普遍的な愛のかたちや人間の温かさを見出すことはできます。ウィリアムとアナの恋愛は現実ではないかもしれないけれど、誰かの心の中にある愛の理想像を映しているのです。


そうロマンティストの私とか!


総評

『ノッティングヒルの恋人』は、ロマンス映画として十分に心地よい作品だと思います。突飛で荒唐無稽な恋物語であっても、その中には観る者の心に響く瞬間がたくさん詰まっているのです。


ただ、この種のロマンスが心に響かない人もいるのは確かでしょう。そのため、客観的な評価としては星3.5くらいが妥当かもしれません。アナの言動の中に本音と建前があり、バランスをアナなりにとっているとは言え、自分勝手に映り辟易したりする場合もあるでしもう。それでも、夢のような恋愛を楽しみたい人には、間違いなくおすすめできる一作です。甘く、美しく、そしてちょっぴり切ない愛の物語に浸りたいなら、きっとこの映画はあなたを優しく包み込んでくれることでしょう。


評価: ★★★☆(3.5)

現実を少し忘れて、コタツでぬくぬくして蜜柑でも食べながら、夢のような恋に心を委ねてみてはいかがでしょうか。


今回は、映画そのものやウィリアムの気持ち、アナの人間性すら端的に表す素敵すぎて強すぎるエルヴィス・コステロの『She』とかいう楽曲が存在するから、オレの作詞とか邪魔くさそうやしポイーッ!