ようこそ、最先端のカオスへ

2023年の第95回アカデミー賞で11部門ノミネートされて7部門を受賞した量子力学的SFアクションコメディ映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をレビュー!


エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

原題:Everything Everywhere All at Once

制作年:2022年(アメリカ)

ジャンル:SF/アクション/コメディ

監督/脚本:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート

編集:ポール・ロジャース

キャスト:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェニー・スレイト、ハリー・シャム・ジュニア、ジェームズ・ホン、ジェイミー・リー・カーティス、and more…


『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のあらすじ

コインランドリーを営みながらも経営と家族の問題を抱えるエヴリン(ミシェル・ヨー)。ある日夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)に乗り移った並行世界の夫から全宇宙の命運を託されてしまう。

そしてエヴリンはマルチバースに存在する自分の記憶や能力を駆使しながら、全宇宙存続の危機に立ち向かうのであった。


『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の感想/レビュー/考察(ネタバレあり)

作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞の計7部門でオスカーを受賞しているらしかった本作。


全然知らんかった!


もはやオスカーに興味が殆どない私。本作が量子力学で言うところのマルチバース(多元宇宙論)を扱っている作品であることすら知らんかった。タイトル見れば察しがつきそうなもんではあるけどもね。(タイトル和訳:

「凡ゆるものがいっぺんに」など。)


なんと言っても私、何故だか量子力学に関する本も読んでるからな!



ということで、監督/脚本が『スイス・アーミー・マン』のダニエルズであることすら知らなかったんだけれど、ひょんなことから荒唐無稽にも程があるだろ。って感じでマルチバースの命運を託されるコインランドリー経営者のエヴリン。



多分コインランドリーである必然性は、ダニエルズなりにあったのであろう。

量子力学的観点から見るなら、コインランドリーの店舗を全宇宙とした場合、ランドリーそれぞれ一つ一つが一つの世界であり、中で掻き回されてる洗濯物がそれぞれの人なりものなり、兎に角素粒子の塊であり、それらは並行世界で存在している。みたいな。知らんけど。それが多分、映画のテーマに沿ってるんだと思われる。



アイデアやテーマ自体は凄く面白いし興味もあるんだけれど、この荒唐無稽っぷりはどうにかならんかったものなんかな?と。お陰様で序盤、全くノレなかった。何これ?状態。

まぁカオスから生じてる現象であるから仕方がかいのか。

はじめに混沌があった。みたいな。

でもよくよく考えてみたら、ダニエルズの『スイス・アーミー・マン』もアイデアは面白いけど思いっきり荒唐無稽であり、それでも私はだいぶ楽しんで観ていたのであった。下品なところが所々あるけれど。


本作も、下品極まりないところが所々あります。その必然性は全く解りません。何ですかね。ユング的メタファーなんですかねアレは。兎に角性的シンボルみたいなもんがまぁまし登場。

それに例えばキューブリックの『2001年宇宙の旅』などの謎のオマージュなどもあって、映画愛がある作品と言えばそうかのか。



これは『ベーグルブラックホール』の暗示か。



ラスボスであるジョブ・トゥパキが、なんと言うかネオエクスデス(FF5)の思想なんだよね。


‘全ての記憶、全ての存在、全ての次元を消し、そして私も消えよう。永遠に!’


みたいな。



そしてちょっと石とかになってみる。(これはそもそも生物が存在しなかったというパラレルワールド。)


ぷよぷよのストーンかな?って感じですけど、There are no rules!ということで、ルールがないんですな。

ルールがないからなんでもありと言えばなんでもあり。つまり、逆に言えば想像し得ることは何でも起こり得るということ。それが量子力学的観点から考え得る可能性論の話。


で、結局どう話を決着つけるのかってーと。


やっぱ結局愛なんだよね。

知ってた。


総評

アイデアもテーマも面白いけれども、何せどうしてそうなった?っていう荒唐無稽っぷりが残念と言えば残念。テーマ的に何でもありだから何でもありなんだけれども。そして量子力学によるマルチバースをアクションで魅せる必要性もよー分からん。純粋なSFじゃいかんかったんか。とは言え、それではダニエルズの特徴を殺すことになるのか。

あとアカデミー賞もポリコレ大概にしとけよとは正直思う。

もっと良い作品ももっと良い演技している人たちも、多分居たじゃろ。ってのが正直な感想。

とは言え、映画として面白くないってわけではなくて、寧ろ面白い方だとは思いますけれどもね。


星3.5!