《悪の根源》を知る為には

その原点に戻らねばならない。

映画ハンニバル・レクター博士シリーズ四部作の第三弾『レッド・ドラゴン』をレビュー!


レッド・ドラゴン

原題:RED DRAGON

制作年:2002年(アメリカ/ドイツ)

ジャンル:サスペンス/サイコスリラー

監督:ブレット・ラトナー

脚本:テッド・タリー

原作:トマス・ハリス(レッド・ドラゴン)

音楽:ダニー・エルフマン

キャスト:アンソニー・ホプキンスエドワード・ノートン、レイフ・ファインズ、ハーヴェイ・カイテル、エミリー・ワトソン、フィリップ・シーモア・ホフマン、and more…


映画『レッド・ドラゴン』のザックリあらすじ

1980年ボルチモア。天才FBI捜査官であるウィル・グレアム(エドワード・ノートン)が、天才精神科医でありながら連続猟奇殺人犯であったカリスマ、カンニバル・ハンニバルことハンニバル・レクター博士を、瀕死の重傷を負いながらも逮捕。グレアムはFBIを退き、フロリダで家族と共に悠々自適な生活を送っていたのだったが、そんなある時、元上司であるジャック・クロフォード(ハーヴェイ・カイテル)が、グレアムの元に訪れ、バーミングハムとアトランタで起きた一家連続惨殺事件の捜査を依頼する。これを受けたグレアムはかつて対峙し逮捕したレクター博士に犯人逮捕の手がかりを求めるのだったが…。


映画『レッド・ドラゴン』の解説/考察/レビュー!(ネタバレ含む)

まず、この映画『レッド・ドラゴン』は、映画のレクターシリーズ3作目でも、トマス・ハリスによる原作はレッド・ドラゴンが1作目であり、更にこの原作は1986年に一度『刑事グラハム/凍りついた欲望』として映画化されている。ややこしやぁ。そしてこのレビューは『刑事グラハム/凍りついた欲望』、及び、原作のレッド・ドラゴンについては言及しないものとする。(原作に関してはいつか読まなきゃ読まなきゃと思いながら、未だに羊たちの沈黙しか読んだことねーから。)


グレアムとレクター博士が対峙して、オープニングクレジットが流れる中、映し出される「黙示録12章3節」という一文。


また、天に別の印が見えた。

それは火のような色の大きな竜で

7つの頭と10本の角があり

7つの王冠をかぶっていた


と、手持ちの聖書のヨハネの黙示録にはありますな。(クリスチャンじゃなくても知的好奇心旺盛なおバカでも聖書くらい読んでみるじゃろ一応!)


ということで、《悪の原点》はここであります。知らんけど。

犯人ダラハイド(レイフ・ファインズ)の背中のタトゥー及び人物像は、ウィリアム・ブレイクの絵画『巨大な赤い龍と太陽を着た女』から着想を得ておりますが、その『巨大な赤い龍と太陽を着た女』は、ヨハネの黙示録の火のように赤くて7つの頭と10本の角があり、7つの王冠をかぶっている竜から着想を得ています。知らんけど。

そしてこの竜とは基本的には悪魔ないし悪そのもののことであります。ますます知らんけど。ここ知らんけど言うとったら、色んな方面からお叱り受けそう。知らんけど。


※ヨハネの黙示録に関しては『予言の書』であり、『預言の書』ではありません。



相変わらずのレクター博士お得意の人を食ったようなはぐらかしや(文字通りにこの人は人を食うわけですけど)、大量の含蓄があるものの、捜査官とレクター博士とのやりとりと言う面にだけ於いて言えば、『羊たちの沈黙』のクラリス対レクター博士よりも面白い心理戦が観られるのではなかろうかと、再見して思いました。

これは、アンソニー・ホプキンスやエドワード・ノートンの演技力によるところもあるかもしれないけれど、単純に脚本が面白いからだと思われる。

そして、レクター博士とグレアム捜査官が同レベルの天才であり、更に似たもの同士である為だと思われる。



犯人自体は映画を鑑賞している我々はある程度したら分かるという半分古畑任三郎形式を採用しているから、ミステリー要素は殆どないけれど、そして謎解きにもそこまで重点を置いていないけれど、サスペンスやサイコスリラーとしてはとても面白い。


そして、ダラハイドとリーバ(エミリー・ワトソン)の恋の心理戦も面白い。



リーバは視力を失っている女性なんだけれど、エミリー・ワトソンはやっぱ演技が上手すぎる。アンソニー・ホプキンスの怪演以上に個人的には惹き込まれる。



フィリップ・シーモア・ホフマン扮する新聞記者のラウンズが車椅子火だるまの刑に遭うアレに関しては、例の自らガソリンを被って、仏教徒に対する高圧的な政策に抗議するために焼身自殺を図った、燃える僧侶ことベトナムの高僧ティック・クアン・ドックを思い出した。


レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのデビューアルバムのジャケットにも使われている。


映画『レッド・ドラゴン』の総評

『羊たちの沈黙』の影に隠れがちなような気がするけど、こちらもだいぶ面白い。レクター博士対グレアム、ダラハイド対リーバなどの心理戦もそうだし、FBI内部の捜査方法や、対新聞記者、時に非情なやり口なんかも見どころなのではなかろうか。あまり痛々しいシーンはあるっちゃあるし、ないっちゃないし、グレアムやられすぎだけれど、シンプルにサスペンスとして、二回目でも楽しめました。なんなら二回目の方が楽しめました。これは多少なり、聖書等の知識が、初見が何年前だったか忘れたけれど、その時に比べたら付いてきているからかもしれない。

ダニー・エルフマンによるダークファンタジー的で不気味な音楽も映画を引き立てていてとても良い。


星ギリギリ四つ!


レクターシリーズは別にここから観てもいいかもしれない。最後が羊たちの沈黙の最初に繋がる仕掛けになってるしね。