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今回は、繰り返す歯茎の腫れについて書きます。
高頻度に見られる歯茎の腫れの原因は、次のようなものです。
●重度歯周病
●歯根破折、ひび割れ
●根尖病巣(歯根の先の炎症)
●パーフォレーション(穿孔)
●智歯周囲炎(親知らずの周りの炎症)
など
もちろん、腫瘍や嚢胞(のうほう)などが原因の場合もあるので、詳しい診査が必要です。
これらの中でも、根尖病巣による歯茎の腫れは、比較的頻度の高いものです。
根尖病巣は、失活歯(神経を取った歯)に起こる病態で、根管治療が不良の場合に多く生じます。
また、虫歯を放置したり、深い虫歯の治療後、歯髄(しずい;歯の神経)が自然に壊死(えし;死んでしまうこと)した場合にも生じることがあります。
根尖病巣は、基本的には根管治療をきちんと行えば治癒し、これにより歯茎の腫れも治ります。
しかし、中には難治性の根尖病巣も存在します。
これは、根管治療を頻回に行っても、歯茎の腫れや違和感が治まらない根尖病巣です。
専門的には、歯根嚢胞(しこんのうほう)や歯根肉芽腫(しこんにくがしゅ)などがこれにあたります。
歯根嚢胞や歯根肉芽腫は、根管治療だけでは治癒しないことが多くあります。
そのような場合には、根管治療と外科処置(小手術)を併用することで、多くを治癒させることができます。
稀に、一本の歯を、何年もかけて根管治療している患者さんに遭遇することがありますが、的確な診断を行えば、もっと早くに解決できるはずです。(抜歯が適応の歯に根管治療を行っても治癒しません)
根管治療前。数年前より、歯茎の腫れと排膿(はいのう;膿が出ること)を繰り返していると訴える。通常、多くの根尖病巣は、1~2回の根管治療を行えば、歯茎の腫れは消退する
根管治療を数回行ったが、歯茎の腫れを繰り返すため、予後不良と判断し、外科処置に踏み切った。歯根破折は無く、歯牙保存の方針を貫くこととした。医師には、常に素早い判断力が求められる
取り除いた根尖病巣。病理診断はしていないが、歯根嚢胞と思われる
根管治療完了後。歯茎の腫れは完全に治癒した。
手術による根尖病巣摘出後も、フィステル(ろう孔;膿の出る穴)がふさがらず、再度根管治療を行った。術者・患者ともに、諦めずに治療を行うことで、良い結果が導き出せることは多くある
治療に当たっては、診査・診断が最も重要になります。
病態を的確に判断し、予後が悪い場合における対処法を事前に考え、次の一手をあらかじめ準備しておければ、難治性のものでも高確率で治癒に導くことが出来ます。
難治症例を治癒させるには、治療の引き出しの数がたくさん必要になります。
あとは、患者さんの諦めない前向きな気持ちと覚悟が大切ですね。
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