今回は、親知らずの抜歯について書きます。

通常、上顎の親知らずは、歯茎の中に埋まっている埋伏歯であっても、比較的簡単に抜くことが出来ます。これは、上顎の骨が柔らかいことと、多くの親知らずが外側(頬側)に向かって生えてくるためです。

一方、下顎の親知らずは、歯の向きが横向きになってしまい、正常に生えてこれないことが多くなっています。
横向きになった親知らずを抜くためには、
①まず歯冠(歯の頭の部分)と歯根(歯の根っこ)を削って切り離します。
②そして歯冠を取り除いた後
③歯根を引き出していきます。

 

   

   顔の腫れを最小限にするため、切開なしで抜歯

 

 親知らずを抜く際に、特に気を付けなければいけないことは、次の2つの重要な神経を傷つけないことです。
下歯槽神経(親知らずの下を走行する太い神経。唇やオトガイ、頬の感覚を司る)
舌神経(親知らずの内側を走行する神経。味覚を司る)

神経の損傷は、多くの場合、親知らずを削って切断する際に起こります。したがって、歯を削るのは慎重に行わなければなりません。

また、麻酔の注射針による神経損傷もあるようですが、神経の切断には至らないので、神経麻痺は一過性のものと思われます。

稀に、歯根が下歯槽神経を取り巻いている場合があり、無理な抜歯は神経麻痺を起すリスクがあります。

もしレントゲン上で、親知らずの歯根と、下歯槽神経が完全に重なって写っている場合には、神経損傷による神経麻痺を回避するため、CTによる術前診査をお受けになることをお勧めいたします。

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