【『クラウン』を読もう! 5】9月14日 p193~p207
【『クラウン』を読もう! 5】 9月14日 p193~p207 「”calli-”という接頭辞」進捗 一日5ページ。色々本を読んだり映画を観たりしてるとやっぱり中々厳しいですね・・・。 うかうかしてると辞書を読むだけで一時間くらい経ってることもあるので、時間を決めて集中して読めるよう、工夫したいと思います。 そういえばtwitterの方、告知をしておきながら更新せず申し訳ありません。面白い項目はあるにはあるのですが、そこまで手が回らず・・・。 一旦、こちら(アメブロ)の方に専念します。同時に二つは思ったよりしんどかった…。イントロダクション 今回取り扱うのは、”calli-”という接頭辞(préfixe)。 接頭辞とは、単語の前について様々な意味を付与するものです。”calli-”の場合は、「美しい~」という意味を加えるものになります。 この接頭辞を取り上げようと思ったのは、そもそも”calli-”という接頭辞自体あったのか!というちょっとした驚きと、「美しい」という基本的な意味にもかかわらず、該当する単語があまりに少ないことへの疑問があったからです。 記事の最後で、なぜ”calli-”から始まる単語がこんなに少ないのか、自分なりの答えを考えましたので、それについても触れたいと思います。"calligraphie" 恐らく、”calli-”から始まる単語で一番知られているもの(というかこれ以外あまり知られてないのでは)です。 日本でいえば「書道」のような、アルファベットの書き方におけるフォーマットのことです。 ”calli-”(美しい)と”graphie”(古ギリシャ語graphêに由来、フランス語の「書くécrire」にあたる)の合成語。 ”calli-”自体が古ギリシャ語に由来するので、その後につく語幹(thème morphologique)も古ギリシャ語由来のものが多いですね… 「書道」との共通点はあるにはあるのですが、全然違うといえば全然違うので基本的には「カリグラフィー」とそのままカタカナで表記することが多いようです。 「カリグラフィー」については、次のような動画がありましたので載せておきます!カリグラフィーの描き方について紹介した動画。音声はフランス語なので、リスニング教材にでもどうぞ。その他の"calli-" calligramme カリグラム calligraphieとidéogramme(表意文字)の合成語。 表意文字とは、漢字のように一つひとつが何らかの意味を持っている文字のこと。アルファベットは一文字だけでは意味を成さない、表音文字に分類されます。 「カリグラム」とは、文字によって描かれたイラスト。 例えば次のようなものを指します。 文字が洋ナシ(poire)のような形に並んでいます。これはフランスの七月王政期(1830~1848)に出版されていたLe Charivariという雑誌に掲載されたカリグラムで、いわばカリグラムのはしりのようなもの。 七月王政期の王様といえばルイ=フィリップ。彼はその顔の形から「洋ナシ」に喩えられて揶揄されることがありました。 上のイラストは文字までは細かくて読めませんが、王政に対して批判的な文章が並んでいるとのこと。それを王様の顔になぞらえて描くとは、なかなかキツい皮肉です。 calligrammeという言葉自体は、20世紀初頭のフランスの詩人ギヨーム・アポリネール(Guillaume Apollinaire、1880~1918)による造語と考えられています。死後刊行された作品集にはそのまま『カリグラム』(Calligrammes, 1918)という名のついたものも。 当時においては相当先駆的な創作活動をしていて、後世の芸術に非常に大きな影響を与えた作家です。私も短編を数編かなり前に読んだだけであまり記憶はありませんが、かなーり独特な世界観を持った作品だったかと。よければ是非。ギヨーム・アポリネール callicarpe ムラサキシキブ 「紫式部」ではなく、それと同名の植物。名前の由来は美しい紫色から。 ”calli-”+”carpe”(古ギリシャ語karpósに由来。フランス語の「果実」fruitにあたる)で構成されています。 ”-carpe”の接尾辞で終わる単語は色々調べたものの、植物学に関するマイナーな単語ばかりだったのかな?どれもうまくヒットしませんでした。 それはともかく綺麗な植物です。Amazonでも販売されていて、思ったより安価で手に入るようです。ムラサキシキブcallipyge 美しい尻の(女性) やらしい形容詞ですみません。でも私じゃなくて古ギリシャ人が悪い。 この言葉が知られるのは、圧倒的に『尻の美しいウェヌス(Vénus callipyge)』という彫刻作品に依ります。 構成は勿論”calli-”+”-pyge”(古ギリシャ語pugế、「尻」)に由来します。『尻の美しいウェヌス』 上の写真だとそんなにお尻が見えませんが、実はこの作品後世のリメイクで、原作の方はお尻が丸出しになってます。そっちを載せても良かったのですがなんだか気が退けたのでこちらを載せました。もし気になる方は検索してみて下さい!なぜ"calli-"で始まる単語は少ない? では、最後にイントロの問題提起に対する自分なりの答えを書いて終わりにしようと思います。 まず、接頭辞には主に次のようなものがあります。 1)「否定」の意味を持つもの…dé-, mal-, dis-など 2)「方向・位置」の意味を持つもの…in-(中に), ex-(外に), sur-(上に)など これら二つの例外に当てはまるのが、例えばre-(再び)、co-(相互に)など。 わりとバラバラのようにも思えますが、いずれもそれほど「形容詞」的な性質を持っていない印象です。モノそのものの性質には触れず、モノが「どう動くか」という所にフォーカスが当たっている感じがします。 そういう単語は決まって、別の言葉で言い換えるのが面倒です。 例えばこのブログのタイトルにもなっている「寄り道」はフランス語で”détour”と言いますが、これをフランス語の別の言葉で簡潔に述べるのは難しい。しかし”-tour”に接頭辞”dé-”をつけるだけで、何となくニュアンスがつかめてきます。 接頭辞を使う単語には、「他の言葉では表しにくい」という共通項があるように思います。 その点、”calli-”は「美しい」という形容詞的なニュアンスを持っています。だから”calli-”で始まる単語は、比較的別の言葉での言い換えがしやすい。 例えば、上で『尻の美しいウェヌス』という彫刻にVénus callipygeというフランス語訳を紹介しましたが、ラ・フォンテーヌ(La Fontaine)という作家がこの作品について述べた時、彼はVénus belle-fesseという言葉を用いました。「尻の美しいウェヌス」というニュアンス自体は、この言い換えで確かに問題はありません。 このように、”calli-”で始まる単語は”beau””belle”などの形容詞を使って問題なく説明できることがあるので、いくつかの単語を残しては消えてしまったのかもしれません。 最後に、なぜ逆に”calli-”で始まる単語が少ないとはいえ残ったのか、ということについて。 ”calli-”で始まる言葉は、すでに紹介したものから鑑みるに「権威のある美」というニュアンスが強いように思います。 単に「美しい」だけじゃなく、古ギリシャから続いた伝統ある美。そういったニュアンスを示すためにこの接頭辞は現代まで残っているのだと思います。 次回、もうちょい辞書を進めたらいいですね…、また面白いものがあれば紹介させて頂きます。 ではでは。