肥満になると、口臭が起こりやすくなります。しかも、血がでる程、ごしごししても取り除けない慢性的な白い分厚い脂っぽい舌苔ができていきます。

なぜでしょうか?それがわかれば根本的な解決が可能ですが、患者さんが理解(自覚)することが重要です。対症療法では対応が難しいからです。


肥満の人が、頑固な白い舌苔と口臭が起こるメカニズムを解説します。

【肥満になるとインスリンの分泌量の増加による唾液の分泌を抑制する作用と乾燥が直接的原因】

肥満が起こると、細胞がインスリンに反応しにくくなる「インスリン抵抗性」が起こります。

 

その結果、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むのに必要なインスリンの量が増えます。

 

インスリンは、唾液腺の神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌を抑制する作用があります。

肥満によって、インスリン量が増えると唾液腺へ神経伝達物質であるセチルコリンの分泌が低下する結果、唾液分泌機能が抑制を受け、唾液による口腔免疫の低下、自浄性の低下による、口腔内の自浄性低下、不潔になりやすく、さらに乾燥によって、不潔な唾液が揮発して口臭がひどくなるのです。

 

【物理的除去が困難な慢性的な頑固な白い舌苔が作られるメカニズム】

肥満傾向の人の取り除くことが困難な白い分厚い舌苔は、口腔機能低下症に陥った人の分厚い白い舌苔や、エイズ患者に見られる高度な口腔カンジダ症の白苔とは異なり、舌苔表面が、滑って油(脂)っぽい感じがします。

白く粉が吹いた感じではなく、
べたべたした感じが多いです。

(写真引用:メディカルユーコン:舌診アトラス


肥満の人は、頑固な取り除けない舌苔に悩まされることがよくあります。
 

これは、インスリンには舌の表面の粘膜細胞の増殖を促すタンパク質である「インスリン様成長因子-1(IGF-1)」の産生を促進する作用があります。

その結果、過剰に、舌粘膜細胞の分裂、増殖を促進させてしまうために、舌粘膜が分厚くなり肥厚して、そこに細菌や、飲食物残渣がとりつくために、頑固な舌苔を形成します。

さらに、通常舌表面の古くなった細胞は自滅(アポトーシス)して、ターンオーバーするのですが、インスリンは舌の表面の粘膜細胞の増殖を抑制するタンパク質である「アポトーシス誘導因子(AIF)」の働きを阻害するために、なかなか、劣化した舌苔がなくならないのです。

このような頑固な舌苔は、物理的に舌苔をとっても、根本的な原因は、肥満によるインスリンですから、肥満を解決できない限りは、永遠につづくことになります。

逆に、「痩せすぎ」や「過剰ダイエット」の場合も、同じようになかなか取り除くことができない舌苔ができることがあります。

また、肥満の場合と同じメカニズムで口臭が起こるのです。

「痩せすぎ」「過剰ダイエット」の場合は、「取り除くことは不可能な分厚い舌苔」以外に別の舌苔問題があります。これは、また別の機会に説明します。

肥満による頑固な舌苔に対する専門的対応

1)頑固な舌苔の最下層には、真菌感染が多く、粘膜に真菌の菌糸が根を張っているので、除菌的対応と、抗真菌剤による真菌症への対応が有効です。

2)根本的な肥満を引きこしている要因(食生活習慣・喫煙習慣・飲酒習慣・ストレスなど)へのセルフコントロール支援

3)体質的な問題も関与することから、漢方的取り組みが有効です。


4)臭気については、無臭化処理の介入が必要です。