最近、「ペリオドンタルメディスン(歯周病医学)」研究が活発に進んできています。

ペリオドンタルメディスンは歯周病と全身の医学の関係を研究する領域です。

以前は、歯周病が全身疾患に波及していくメカニズムは、次のように考えられていました。

(図引用:山崎和久他:口ー腸ー全身軸、ペリオデンタルメディスンの新たなメカニズム

①菌血症説

これは、口腔内細菌が、歯周病によって組織破壊が起こると、その部位から、血流に口腔内細菌が一過性に血中に移行して、各種の臓器につながる血管を傷害して、全身疾患をもたらすという説。

しかし、後の研究で、あくまでも一過性であり、遠隔臓器の組織に口腔内細菌が定着・増殖し直接悪影響は与える可能性は低いと考えられています。

②サイトカイン説

炎症部位の炎症性サイトカイン(免疫細胞や他の特定の細胞タイプから分泌されるタンパク質の一種です。炎症反応を促進する働きがあり、細菌やウイルスなどの病原体から体を守る役割を果たします。)が過剰に生産され、かえって全身疾患な発症や進行を引きおこすという説。

この仮説を証明するエビデンスが、まだまだ不足している状態です。
 

ペリオドンタルメディスン(歯周病医学)分野で、新たな因果メカニズムが明らかになりつつあります。

③口ー腸ー全身軸説です。

重度の歯周病患者の唾液の中には1CCあたり歯周病菌が数百万も含まれています。

人は、一日 1~1.5リットルも唾液を飲み込んでいますので、歯周病菌だけで一日数億個から数十億個飲み込み、その他の口腔内細菌を含めると、1兆~数百億の口腔内細菌を飲み込んでいることになります。

大半は、胃で殺菌されるも、一部の菌は、下部消化器官に届いていることが、わかっています。

これらの菌は、腸の常在細菌叢に影響を与えることもわかっています。

その結果、腸管免疫低下が起こり、それが脳を介して全身の免疫低下を招くというのが、口ー腸ー全身軸説です。

この仮説を裏付ける研究がスタートしています。

ほんだ歯科では、昨年1月より、口ー腸ー全身軸のペリオドンタルメディスンに基づく、歯科先制医療を実験的に開始し、その評価に基づいて、いよいよ、来年から標準療法である従来からの細菌感染症としての取り組みと並行した、全身への波及を同時に食いとめる、取り組みを開始の予定です。

その結果、医科とも連携を図りつつ歯周病と全身炎症性血管疾患(糖尿病や癌、心疾患)の両方の進行を食い止めることが可能になります。