「機能性ディスペプシア」という疾患名を知っている人は、あまりいないと思います。

「機能性ディスペプシア」という病気は、最近になって提案されている消化器系の病気です。

 

どのようなものかと言うと

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がないのに、胃痛や胃もたれ、胃の膨満感などが継続的に続く方が多くいらっしゃいます。
 

前はストレス性胃炎などと診断されていましたが、近年になって新しく「機能性ディスペプシア(functional dyspepsia, FD)」 と定義されるようになったのです。
 

内視鏡検査で、胃炎や逆流性食道炎を認めても症状があるとは限らず、逆に症状があっても異常所見が認められないことが多々あります。

これは、歯科でも多くの患者さんがおられます。

シェーグレン症候群でもなく唾液腺に異常がないのに、ドライマウスに悩まされる人。

噛み合わせに異常がないのか変わらず、噛み合わせがおかしいことを実感する人。


お口の中に虫歯や歯周病がないにもかかわらず不快症状に悩まされ続ける人。

誰にでもある生理的口臭に悩まされ続ける人などです。


この原因は、臓器に病的所見がないけれど、様々な理由で機能がおかしくなっているのです。

既知の病気(器質的異常)しか診ない場合は、明確な診断や、治療もされるこのとなく、精神的な問題からくる疾患とみなれ、歯科心身症専門科や心療内科などに回されることが多いです。(過剰不安をコントロールすることは、精神科とのリエゾンは有効です

その結果、原因が分からず、治療難民となり、ドクターショッピングを繰り返しつつ増悪する事がよくあります。

実は口も消化器であり、消化器としての機能的な問題が生理的口臭を常習化してしまうものと考えてます。

 

 

「機能性ディスペプシア」の特徴は、第3者には分かりにくく、歯科で行われるレントゲン検査やCT検査でもわかりにくい、訴えに基づく原因の仮説と、それを証明できそうな機能的な検査が重要になります。

ただ、この領域は専門家が少なく、患者と共に試行錯誤して、治療していくことが重要になります。

歯科には、教科書を見ても「機能性ディスペプシア」と言う病名も概念もないのですが、あらたに「口腔機能性ディスペプシア」(Oral Functional dyspepsia, OFD)と命名して、さらなる研究と臨床応用を継続したと思っています。

「口腔機能性ディスペプシア」が始まると自覚的な生理的な口臭が起こりやすくなります。

これには、老化は病であるという最近の概念を当てはめると、従来からの歯周病などの関連が繋がっていく気がします。

また、東洋医学で言うところの未病と言う概念で説明がつくように思います。