病的口臭は歯科的疾患(歯周病)副鼻腔、口腔粘膜疾患、肺、および内科的疾患がありますが 中でも、歯科的な問題以外で、一番多いのが、慢性扁桃炎等による、病的「膿栓」が原因である事がよくあります。



私達は、咽頭を視診して、病的な疑いがある場合は、無臭化処理と同時に、耳鼻咽喉科に精査を診断を依頼してリエゾン治療を実施します。

多くは、治療としては扁桃摘出術」が行われます。
 

その結果、術後1週間までは口臭レベルは、手術の影響もあり。上昇するものの、2週間目には口臭レベル(3種類の揮発性硫黄ガス濃度)が低下するということが報告されています。

(参照論文:
Kyu Young Choi,et al.:Assessment of Volatile Sulfur Compounds in Adult and Pediatric Chronic Tonsillitis Patients Receiving Tonsillectomy.Clinical and Experimental Otorhinolaryngology, 04 May 2018, 11(3):210-215)


下矢印論文からの引用図です

(図左から 硫化水素、メルカプタン、ジメチルサルファイド)

 



しかし、実際に
扁桃摘出術」を受けたにもかかわらず、口臭が改善しないことに、しばしば遭遇します。ゲッソリはてなマーク

統計的には、口臭は緩和しても、施術を受けた人が全員改善するだろうか?という疑問を持っていました。

「慢性扁桃炎」治療によって改善しても、口臭は、必ずしも改善しない人がいるのでは
??と疑っていました。

これは、ちょうど歯周病治療を受けたにもかかわらず「歯周性口臭」が無くならないい人が一定数いるのに似ています。この場合は、歯周病以外の原因であることことが多いのですが・・・


その疑問を晴らすべく、論文検索していると、

「Tonsillectomy for the treatment of halitosis.(口臭の治療のための扁桃摘出術)」という論文に明らかにされていました。
(参照:
Al-Abbasi AMTonsillectomy for the treatment of halitosis.,Nigerian Journal of Medicine : Journal of the National Association of Resident Doctors of Nigeria, 01 Jul 2009, 18(3):295-298)


この論文では、扁桃摘出術と口臭への効果がどのくらいであるかが報告されていました。
 

口臭の完全な改善は4週間後に31人の患者(70.4%)で発生し、この値は8週間後の2回目のレビューで35人の患者(79.5%)に増加したことが報告されています。

したがって、20~30%の人達は、病的膿栓があって扁桃摘出術を受けても改善しない人がいるということがわかります。

この事実は、私が日常的に経験する結果にほぼ一致しています。

おそらく、咽頭部には、扁桃腺だけでなく、扁桃細胞が多数あり、(舌の奥にも扁桃細胞があります。)膿栓だけではなく総合的に作用しあっているからと思いますが、その部分の・保湿や恒常性を維持しているのが、口腔内の唾液の機能であると思っています。

喉の奥の問題は、舌の動きや唾液の流れが深く関わっています。

膿栓や、後鼻漏の問題は、耳鼻科的な治療と並行して口の機能も影響を与えているのです。

歯科月刊誌(歯科医向け)
アポロニア21 2月号 好評発売中
(日本歯科新聞社発行)



●(毎号連載) 
   新・口臭と口臭症へのアプローチ
      

  第6回「生理的口臭の特徴」です。
         
          本田俊一

購読は ここから