日常(カミングアウトのこと) | quarters

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いろんなライブの記録。二丁目の魁カミングアウト・きのホ。・ONIGAWARA・ RAG FAIR・ズボンドズボンなど。

ある日の特典会と、その周辺のおはなし。




わたしは本当に泣けないオタクで、超泣きたいし泣ける人が羨ましくて仕方ないのに、ぺいちゃんに泣いてるところを見せたのはたぶんこの22ヶ月でも3回くらいだと思います。

泣いてる風 の顔は得意で、通い始めてしばらくは4人とも騙されてくれていたけど(騙す気はなかった)、ぺいちゃんはたぶんすぐ「あっこいつほんとは泣いてねえな」って気づいた。

ぺいちゃん0ズレの青春でほんとに泣いた時の「(泣いたーーーwwwwww)」の顔一生忘れないので。まだ曲中だろ指さす勢いで笑ってんじゃねえ。


特典会の終わりの予感というのも最近ぼんやりと感じていて、その前に絶対にぺい10をやらなきゃ死ぬほど後悔するってわかってたから、わたしは高崎をえらびました。

衣装はウェディングでした。



10枚のうち5つはやりたい構図があって、耳が写る寄り(わたしのトラガスが健在なうちに……)とか、しゃがんで上から撮ってもらうとか、ぺい2S200枚目になる最後は一番つよいハグで。あわよくば名前を呼んでほしい。

まず最初にぺいちゃんには「変な顔したら怒る」って釘をさして、ミキちゃんたちには手紙を読んでもらおうと決めていました。


手紙はミキちゃん宛てでも、ぺい宛てでもなくて、わたしの両親に宛てたものです。




「ぺい10!ミキちゃんたちは読んでてください」

「大人しく読んでる」


追いやったわけではないの、わたしはどうしても読み返せなかったから、ミキちゃんから、なんだろうなあ、後ろ盾?が欲しかった。




「ぺいちゃん。」

「んー?」


リクエスト!と思ったのに、推しメン察しがいいからさあ!並んでる時からわたしが物々しさを醸し出してたんだろうねえ!ぺいちゃんから耳に手を当てて、内緒話を聞き出そうとしてきた。そしたらもう、わたしは本題を言うしかなくなる。



……今日親に言うの」


耳打ちで伝えた。なにを、って言わなくてもすぐわかってた。推しメン察しいい!


……初めて紹介するの?」


ぐるっとわたしを後ろから抱きしめて、やっぱり他の人には聞こえないように。



「こわい」


泣くつもりはなかった。泣いたらチェキ写りがさらにブスになる。けど声がもう、3文字分しか出なくて、よりによって出たのがそんな単語で、外に発したら涙も一緒に出てきた。ぺいちゃんの肩に顔をうずめて、とてもとても久しぶりに泣いた。



「~~こわいねえ。……大丈夫だよ。あたしがいるから」


正面からぎゅーーーって抱きしめて、あまっあまな声で言う。


「んっ」

小指を出してくれて、3回目の指切りをした。


1回目は去年の419日、やめすこの初披露で、わたしの一周年の現場でした。「つらいときもそばにいる」とぺいちゃんが約束をしてくれた。

2回目は二周年の春、わたしから小指を出した。

「わたしに推されて幸せでしたか?」って訊いて、「当たり前」と答えてくれた日。



ぺいちゃんにしてみたら深い意味なんかなくて、アイドルの定番チェキポーズなのかもしれない。けど、わたしにとっては年1でやっと交わせる特別なことで、心の準備をしていなかったからうれしくていとおしくて困った。

ぺいちゃんはみんなのアイドルだけど、これはわたしだけの約束。




「ぺいちゃん力あげて」


手紙を読み終えたミキちゃんが便箋をぺいちゃんに手渡して、ぺいちゃんがそれにちゅーするように目を閉じて鼻先に当てた。わたしの罪悪感のかたまりを、ちぎった気持ちを救うみたいに。

赤、黄、青、白の4色のお花の便箋。



「あたしがいる」



リスエストまじでまったく通らなかったけど、最後の1枚だけ、200枚目は喉が圧迫されて苦しくなるくらいぎゅーっとハグをした。



「大丈夫だよ、これも愛だよ」

そのミキちゃんの言葉の意味は正直よくわからなかった。誰から誰に向けての愛なのか。でも手紙を読んでくれただけで、ふれてくれただけで十分嬉しかった。



「こわい」

「うん」



本当にすみませんなんだけど、きまるちゃんとミキちゃんの顔は見れなかった。はくちゃんは、一番お兄ちゃんの顔をするのはむかしからはくちゃんで、わたしがtwitterでカミングアウトしたときも、ぎゅうと手を握って力をくれた。頭を撫でてくれた。

わたしが今夜最後に目を合わせたのも、実はぺいちゃんじゃなくてはくちゃんでした。





むかし友人の結婚式に出て、「結婚しないと神様の保証得られないの世知辛いな」ってぼやいたとき、せんせーは「お前にはお前の神様がおるけんだいじょーぶよ」って言って、ぺいちゃんは「あたしが保証する」って言った。あたしがいるから、って。


アイドルはアイドルでいることがお仕事だから、くれた言葉すべてを額面通りに受け取るなんてできない。けど、わたしはぺいちゃんの小指のつよさを一生信じたいです。


この日を選んだのは、明日もライブがあるから、明日も会いに行けるから、が大きな理由でした。

4人がいればなんでもできるの、ってわたし春に言った。



見返したら10枚のうちわたしの顔が映ってるチェキ3枚しかなくてさすがにウケた。みんな~!10枚出しするときはノーエモの日がいいよ!!

叶わなかったチェキネタは201枚目からぜんぶ回収するからよろしくね。






ここからはわたしの家の話です。

手紙は渡せました。



カミングアウトをしよう、と決めたのは実は1年半前、30歳の誕生日でした。

Twitterにウェディングドレスを着た写真を載せて友人各位に、それから弟に伝えました。両親にもその後で伝えるつもりだったけれど、弟に「今はやめた方がいい」と止められて、弟が言うならそれはそう、と少し安心してしまった。まだ逃げていられるって。


わたしそれまで二丁魁さんに言った記憶無いんだけど(手紙に書いたんだっけ?)、誕生日前の最後の特典会で「カミングアウトしようと思います」って報告したとき、ぺいちゃんはわたしに彼女がいること全然驚いてなくて、それにわたしは驚くくらいでした。




「無理しないでね。言うことだけが正義じゃないからね」



1年半ずーーっと『正義』ってなに?って考えてた。手紙を渡したあとの方が、わたしの正義は間違ってる気持ちになった。

カミングアウトをしたのは『勇気を出してがんばった!』とかそんな美談ではなくて、ただわたしが楽になりたかっただけでした。わたしが「こわい」と言ったのは受け入れてもらえないことではなくて、わたしの両親は絶対に「あなたが幸せならそれで」と言う人たちで、そんなことはずっとわかっていて、それが、わたしが許されてしまうことが、親に許させてしまうことが苦しくて、わたしがいかに親不孝かを自覚するのがこわかった。



かわいそうだなあ うちの親は。孫の顔も見れないし、娘は帰省のたびに苦しそうにしてるし、

と思った。かわいそうにしてるのはわたしだ。

こんなに愛情深く育ててもらったのに、




わたしはいま好きな人と一緒に暮らしていてすごく幸せで、親にしてみりゃあ娘は幸せな方がいいに決まってんだけど、幸せでいればいるほど申し訳無くなる。


恋人が女の人でもいいよ、って承認ではなくて、恋人できたの?ヤッター!って歓迎されたかった。そしてわたしの好きな子こそ、一抹の後ろめたさもなく誰からも祝福されていてほしかった。





残念ながらこの話にオチはなくて、わたしは毎晩悲劇のヒロインぶって泣いちゃうし、そうこうしてたら台湾決まってバタバタだし、お金ない!株でもやるか!?になってきたので、たぶんしばらくまた現実から逃げます。ずるいねえ。




でもいつか、もう少しわたしが落ち着いて話ができるようになったら、「だてさんと彼女さんの子どもになりたかった」って言ってくれたミキ推しときま推しとはく推しのオタクの話をしてみたい。

なりたいとかじゃなくて、「あたしが2人の子どもになる!」って勝手に愛娘宣言したアイドルちゃんのことも。




そんな日常でした。株がんばります。