抗うつ薬のプラセボ反応率は変わっていなかった | EBMHのブログ

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Placebo response rates in antidepressant trials: a systematic review of published and unpublished double-blind randomised controlled studies. Lancet Psychiatry 2016

抗うつ薬試験におけるプラセボ反応率:出版・未出版のダブルブラインドランダム化比較試験の系統的レビュー

Furukawa TA, Cipriani A, Atkinson LZ, Leucht S, Ogawa Y, Takeshima N, Hayasaka Y, Chaimani A & Salanti G

http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(16)30307-8/abstract

 

なにがわかったの?

抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ反応率とは、プラセボ群に割り当てられた人の中でうつ症状が治療に反応して改善した人の割合です。プラセボ反応率は1970年代からどんどん上昇してきており、これが抗うつ薬の臨床試験が失敗が終わる(抗うつ薬とプラセボで差が出ない)要因と信じられていました。しかし実はプラセボ反応率はこの25年間ほとんど変わっていなかった、というのがこの研究でわかりました。

 

もっと詳しく・・・

この研究では、250を超える1978年以降の新規の抗うつ薬のランダム化比較試験(RCT)の出版・未出版データを集め、メタアナリシスを行っています。その結果、平均的な反応率はこの35~40%と変わっていないことがわかりました。

 

ラセボ反応率がどんどん上昇しているように見えたのは1970-1980年代の臨床試験に観察期間が短く単施設の試験が多かったためにプラセボ反応率が低い試験があったのが原因のようです。

 

抗うつ薬の臨床試験で抗うつ薬がプラセボと有意な差を出せないのは、プラセボの反応率が高くなってきたからと言われてきましたが、そうともいえない、ということです。これは今後の臨床試験のデザインを考えていくうえでも重要となるでしょう。

 

臨床家へのメッセージ

プラセボでも35~40%の患者が反応するというのは、臨床試験という特殊な状況であり、実際の現場にこのままあてはめることはできません。

 

この研究でわかったように試験のデザインの違いによって反応率は影響をうけます。

論文を読むときは一つのRCTの結果ではなく、質の高いメタアナリシスの結果を見るほうが望ましいでしょう

http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(16)30415-1/fulltext