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昔、俺は漫画家を目指しながら、ダスキンで働いていました。

サラリーマンでいると、漫画収入がなくても
生活はできてしまうのです。

漫画家としてプロデビューはしていたけれど、漫画だけでは食えなかった俺でした。
なのでなかなかサラリーマンを辞める踏ん切りがつかなかったのです。

でもこのままではいつまでも食えない漫画家です。
いや、決して漫画家とは言えません。

漫画だけで食えるプロの漫画家を目指していたはずなのに、
いつまでも二足の草鞋を履いてチャレンジしていては、
お尻に火がつかず、本気で頑張らない気がしました。

それで1年という期限を設けて漫画だけに専念し、
漫画家として食える足がかりが掴めないなら、
長崎に戻って、一から出直そうと考えました。

亡くなった前妻を説得し、
それまで働いていたダスキンを辞めて、俺は仕事を漫画一本に絞ったのでした。

結果、捨て身のチャレンジが功を奏して、
1年以内に漫画だけで身を立てることができたのですが、
その原動力のひとつに、元同僚達の応援がありました。

ダスキンを辞めるときに、二人の同僚が餞別として時計をプレゼントしてくれたのです。
腕時計のない俺は、いつも二人に時間を尋ねていたので、
見るに見かねていたのだと思います。

嬉しかったですね。
辞めていく俺なのに、頑張ってくださいと応援してくれた二人。

時計のベルトは何度も交換しましたが
今でも俺の左腕で時を刻んでいます。
本当にありがとうね。一生大切にします。