武田 泰淳
司馬遷―史記の世界

私の愛読書「日経ビジネス」が「敗軍の将、兵を語る」の掲載を始めたのは

1976年1011日号で、ちょうど30年を記念して特集を組んでいる。

日本の故事成語「敗軍の将、兵を語らず」は、司馬遷の『史記』での

敗軍之将,不可以言勇(敗軍の将は武勇伝を語ってはいけない)」から

来ているという。

しかし、この『史記』ではさらに敗軍の将から策を聞いた名将が天下統一を

果たした続編があり、「敗軍の将、兵を語る」で失敗から成功のヒントを

得たいとこのタイトルでの特集が生まれたという。

今回の特集には、前三井住友銀行頭取の西川善文氏他5人が登場しているが、

ここではヤオハンのオーナーであった和田一夫氏を紹介する。

和田氏は、熱海市の八百屋を中堅スーパーチェーンに育て、ブラジルでの撤退を

経験しながらも、アメリカに続き香港の成功に酔い、活動拠点を中国に移し

上海でも大型投資をしたこと等が原因でヤオハングループは1997年に

約1600億円の負債を抱え倒産した。

私が米国ロス駐在時、ヤオハンUSAは日本駐在員の多いトーランス店の

成功をバネに、リトル東京での本格的な大型店開店そしてニューヨークへと

米国の事業を展開していったが、まさに飛ぶ鳥を打ち落とす勢

あったことを昨日のように覚えている。

この和田氏は77歳の今、上海で経営コンサルタントとして日本企業の

中国進出の支援活動をされているというが、どうか敗軍の将として

良い時が一番危ない」と反省しながらアドバイスされていることを・・・・

40年前に日本に進出した米国の資産運用会社フィデリティに大和証券から

転職した蔵元康雄現副会長は、在任中の京セラやセコム、日本電産という

起業家精神に溢れ若いながら「しなやかで折れにくい竹」のような経営者に

会えたことがとてもラッキーであったと回想されている。

(同「日経ビジネス」10.9号)

昨今のIPO市場の経営者には、将来敗軍の将にならない為にはこの

「しなやかで折れにくい竹」のような強靭な起業家精神貪欲な事業家魂を

忘れないで欲しいものである。




畑村 洋太郎
社長のための失敗学