　これから札幌行きですが、その前に。
　蝦読weekly、今週読了した本はこちらです。
　陽性だったため２週分です。しかも時間があったので結構読んでいまして、えーと溜まってます(笑)。

かげはら史帆著　『ニジンスキーは銀橋で踊らない』
　天才バレエダンサー・ニジンスキーの妻ロモラを主人公とした物語。
　バレエの世界は門外漢だが、一人の人間の半生を描いた大河小説して抜群の面白さだった。また、２つの世界大戦をはさむ時期のヨーロッパを中心とした芸能・文化の様子を垣間見ることができるのも、よくわからないことに触れるワクワク感があった。どちらも私の大好物だったので、あっという間の読書時間。自分の愛する者を守るために右往左往する主人公の行動力は魅力的だし、ラストはまさかまさかの日本が舞台。どういう結末を迎えるのか、ページをめくるのが楽しみだった。
　よい小説。著者のほかの著書も読んでみたくなりました。

水野仁輔著　『カレーの奥義』
　料理人でもあり、カレーの研究家でもある著者が10人のカレー作りの達人たちと対談した内容をまとめたもの。
　カレー作りは私も好きなので、時折やっているのだが、いろいろ試して作るものからシンプルなものまで、さまざまなバリエーションがあって、深いなぁと感じます。市販のルーを使って作るのでさえそうなのですから、カレーを探求して、店を出して提供する達人たちの感じる深さと技術はいかばかりか。実は再読で、以前読んだときは達人たちのカレーのレシピを期待していた分、期待外れに感じましたが、改めて読むと達人たちの理想を追求する姿、技術、思考の数々には唸らされてばかりです。
　全く足元には及びませんが、カレーを食べたくなるし、作りたくなる一冊。

宇佐見りん著　『推し、燃ゆ』
　芥川賞を受賞したくらいから読んでみたいと思っていたんですが、文庫化されたので。
　推しを推すことに生活のほとんど全てを費やす主人公。家族から異端視され、社会に出ても上手く行かず、やがて推しの起こしたトラブルから何かがズレ始めていきます。生きがいであった推すという行為が推せなくなったときに、一体どんな結末が待っているのか。描写されるその姿は主人公にとって破滅か救済か。人によって捉え方が変わっていくように思います。
　私自身は、ここまで何かを「推す」経験はありませんが、「ひたすらに推す」ってこういうことなんだな、と。文は読みやすく、量も丁度よい。一日で読み切り、いろいろ考えさせられました。

『芥川龍之介・菊池寛共訳　完全版アリス物語』
　初めて『不思議の国のアリス』を読みました。
　芥川龍之介と菊池寛の共訳と聞き、ずっと気になっていました。『アリス』の内容も異世界冒険物として、暖かく楽しい話でしたが、訳も全く古くなくて、最初の『アリス』がこれで良かったなぁと思います。
　しかし、文豪と呼ばれる人はどんな作品も読みやすくするものです。芥川、菊池、北原白秋の関係を記した解説も良かったです。

鏑木毅著　『極限のトレイルラン』
　著者は私がリスペクトするランナーの一人。ランナーとして、そして大会の主催者としての苦闘の姿が描かれます。UTMB3位も快挙だし、UTMF開催も凄いこと。これまで何度も読んで、トレイルレースの醍醐味や面白さ、そして企画運営側の苦闘ぶりもわかって、このページ数だと思うと満足度は高いです。
　トレイルは短い距離の大会に2度ほど出たくらいです。やっぱり怖いんですよねぇ……。

井原西鶴著　『好色一代男』
　江戸時代の大作家による「好色な」男の一代記です。
　訳者によると主人公の世之介は光源氏に例えられているとか。確かに粋な遊び方を知る人ですし、自分の思いに素直なところは若き日の源氏とオーバーラップしないこともないですが……鬼畜すぎ(笑)。特に若い頃の世之介は。
　そんな奔放であり、欲に素直な主人公だからこそ、物語が生き生きと動いていると感じます。当時の風俗、遊郭のきまりごとのようなものが垣間見られるのも良かった。楽しめました。

興津要編　『古典落語』
　「読んでも面白い」と思われる古典落語を集めた一冊。
　落語は全然詳しくありませんが、『いだてん』の影響でいくつか聴いていまして、立川談志や古今亭志ん朝、柳家小さんの噺は今も時折聞いては唸らされています。
　この本に出ている落語も今回初めて聞くタイトルも多いですが、確かに読んでも楽しめました。落語に読んで触れることのできる良著だと思います。
　でも、やはり聴く方がいいなぁ。

　では、まずは札幌に向かいます。

蝦読weekly 20230814～0826