　蝦読weeklyです。
　今週読了した本はこちらです。

池波正太郎著　『梅安蟻地獄』
池波正太郎著　『梅安最合傘』
池波正太郎著　『梅安針供養』
池波正太郎著　『梅安乱れ雲』
池波正太郎著　『梅安影法師』
　劇場版『仕掛人・藤枝梅安』が想像以上に良く、本棚から引っ張り出してきました。
　『仕掛人・藤枝梅安』シリーズは何度も読んでいます。この作品にはTV時代劇の『必殺』シリーズから入ったので、初読の際にはその温度差に驚きましたが、今となっては著者の描く雰囲気にすっかり魅了されています。
　江戸の市井を舞台にした、静かで淡々としていて緊迫感のある世界。人の命を奪う一方で人の命を助けるという矛盾、「世のため人のためにならない者の命を奪う」ことを悪業だと思っている価値観、表の稼業への生き甲斐、旨い料理と酒、彦次郎との関係……暗殺者の人間らしさを情緒豊かに描く「仕掛人」ワールドはいつ読んでも心地よいです。『蟻地獄』と『最合傘』は連作短篇となっているので読みやすいのも良し。仕掛のない話もあったり、バラエティに富む展開でいつ読んでもいつの間にか終わっている感じです。『針供養』『乱れ雲』『影法師』は一転して大物を相手にした仕掛をめぐる長編。読み応え十分です。
　『オリエント急行の殺人』の後は新書とか『白楽天詩選』を読むつもりでしたが、『仕掛人・藤枝梅安』シリーズに浸った１週間でした。シリーズはあと1冊で終わりですが、ここまできたら昨年読んだ『殺しの四人』を最後に読んで、全巻制覇します。

姜尚中著　『漱石のことば』
　0221は「漱石の日」と聞き、作品を読むのは時間的に厳しかったので新書のこちらを。
　漱石は数年前から年に数冊読んでいて、文庫になっている小説は結構な数読んでいると思います。『三四郎』は毎年読んでいますし、『虞美人草』『草枕』あたりも時間ができれば読んでいますが、もちろん覚えていないことばかり。新鮮な気持ちで読むことができました。
　引用される作品として目についたのは『こころ』と『それから』。著者の中では高評価なんだな、ということがわかります。一般的にも好評の作品だとわかっていますし、読んで面白かった作品ですが、自分にはあまり刺さらなかったんですよねぇ。今年中にもう一回読んでみようかな。

　ちなみに『仕掛人・藤枝梅安』シリーズ（小説・映像等含め）と時代劇の『必殺』シリーズ。私はどちらもファンですが「別モノ」として楽しむに限ります。
　前者のイメージで後者を見ても、後者のイメージで前者を見ても、きっと違和感を抱くことでしょう。『必殺』の基盤になっているのは『仕掛人』なのでしょうが、見せたい、楽しませたい方向性が違うと思っています。これはあくまでも自分では、ということになりますが、齢を重ねて『仕掛人・藤枝梅安』シリーズの心地よさがしっくり来るようになっています。

蝦読weekly 20230219～0225