去年の11月頃、私のいるビジネスセクターのトップが交代になりました。それ迄のトップは、会社の中で一番大きなセクターのトップになり、まぁいわゆる「栄転」を果たし、我々のセクターのトップはまた全く別のビジネスから横滑りしてきました。彼にとっても、サイズが大きくなったので、栄転です。

年があけ、セクターの施政方針演説がありました。その中で私は「え?」っと思ったことがありました。本当に小さな一言でした。けれど、もの凄く重要なことを彼は言ったのです。

「これから毎月主要な国とは直接電話会議をして、ビジネス状況をレビューしてもらうことにしたよ」

文章で言えば、一文です。多くの人は気にも留めなかったかもしれません。けれど、私は
「え~~~~?!!」と思ったのです。

これは本社にいる自分の直接の部下(各ビジネスユニットのトップ)を飛び越して、現場に状況を聞くと言っているのです。例えば、社長が毎月の数字や状況を聞くのに、部長や取締役を飛び越して、課長や平社員に聞く…と言っているようなものです。

これの何が悪いのでしょうか?実は悪いこと満載なのです。

1. セクターのトップがビジネスユニットのトップに「あなたのことを信じない」と言うメッセージを送っている

そもそも、組織構造は飛び越さないためにそのような構造になっている筈です。飛び越した方が効率よく運用出来るのだとしたら、その飛び越されたレイヤーは「無用の長物」に他なりません。そうなると、飛び越されたレイヤーは神経質になります。そうなると何が起こるか?飛び越されても、自分も同じことを知っているとデモンストレーションをしないといけなくなります。本来ビジネスに邁進してもらいたい各国のオペレーションに2倍以上のレビューを課すことになるのです。ビジネスの邪魔以外の何物でもありません。

2. 各国のオペレーションが告げ口をする

本社の各ビジネスユニットは、そこだけで閉じた宇宙の様な状況になり勝ちです。品質問題が起きて、世界中で売り上げがとまっても、その品質問題は誰が不届きものだったのか?見たいな犯人探しに忙しくて、品質問題そのものはなかなか手が付けられない…といったことも往々にしてあるのです。

セクターのトップが直接国と話すということは、そういった本社の機能不全を痛烈に告げ口する機会を与えます。そもそも、「お前のことは信じない」というスタンスでいる、セクターのトップがそういう告げ口を先に聞いてしまったらどうなるでしょう?ビジネスユニットのトップは苦境に立たされます。すると、多くの人は「保身」に走ります。一生懸命頑張って問題を解決しようとしている担当者を生け贄にして自分の「リーダーシップ」をデモンストレーションする誘惑が増えるのです。

もちろん本社の社内の機能不全がそもそもの問題ではあるのですが、そういう機能不全の多くは実はその生け贄を差し出して「私は潔白です」と言っているリーダー達にあるのです。

最終的に誰が一番損をするかというと、本社の中間管理職です。もしも、彼らが保身に走ればその生け贄はどんどん下のレベルに下がっていきます。下になればなるほど、説明をする力もなければ反撃にでることも出来ません。

こうして陰湿で全員がびくびくする組織が出来上がるのです。


案の定、ビジネスユニットのトップは
「毎月国のレビューを加える」
と、いいだしました。今迄国の状況をまとめてマネージしていたエリアのマネージャーを飛び越して話をするというのです。これは取締役が部長をすっ飛ばして課長か平社員に聞くと言っている様な物です。

ということで…
私が想像した悪い予感が当たりつつあります。

それでなくても、「粛正」と「恐怖」でコントロールする体質のある組織なのです。これで、ますます陰湿さをまして行くファクターが増大した訳です。

ここを立ち去ると決めた時、
「もう、目が合っただけで理由もなくターゲットにされることもないなぁ」と、肩の力が抜けたのが、自分でも一番の驚きでした。

そうして、ここへきて更に陰湿さが増す状況になりつつある…立ち去る決意をしたのは正しかったと、残して行く部下のことを気にしながらもほっとしている私がいるのです。

上の人が自分の部下を「信じない」時、組織は恐怖の増幅機に変身します。それを改めて、反面教師としてここで学んでいます。