KさんLさんと来て、また新しい人の話をしようと思います。Sさんにしておきましょうか。
sさんは私がアメリカに戻ってから日本の支社に入社して来た人でした。すなわち一緒に働いた経験は全くありません。その上担当は人事です。まぁ全然接点がないはずの人でした。
しかしながら、Sさんについては、実際にお会いする前に話に聞いていました。Sさんが会社に来てから、「組織の活性化」の一つとして、組織管理職の人達のEQに注目することになったそうです。多分Sさんの提唱だったのではないでしょうか。
EQとは Emotional intelligence quotientのことで、「心の知能指数」と呼ばれています。自己や他者の感情を理解して、自己の感情のコントロールが出来る能力をさします。
そして、組織管理職の人達で「優秀」と言われて抜擢されている人のEQがかなり低い事実が明らかになったという話を聞きました。想像ですが、上司に認められようと必死で頑張って来て人生これ戦い…みたいな人達が昇進して来ちゃってるんでしょうね。そうすると、Lさんの上司の様に部下を認めてあげることが出来ません。自分の成果ばかりに注目が行っていては、周りの人の感情を読んで自分をコントロールし、周りをうまく乗せる…というトレーニングが余り積めませんから。
「面白い人ですから一度会うといいですよ」
とは言われていたのです。
そして、SさんはLさんの飲み友達でもありました。Lさんと話をすると、大体上司の話が出て来て、このLさんの上司のpeople skillに関してSさんも全く認めていない…という話題で、Sさんが登場するのでした。
私は「いつか日本に戻る」ということで、Lさんに「Sさんに私の履歴書渡そうか?」と半分冗談で言っていたのです。でもまぁそれはともかく一度一緒に飲みましょう…そんな話になりました。
さて、私が日本に出張で出かけたおり、Sさんとお酒を飲む予定にはなっていましたが、仕事をする予定は全くありませんでした。ところが、ひょんなところからオフィスで出くわし、
「質問があるんです」
と、挨拶もそこそこにSさんが切り出しました。それはセールスの賃金制度についてでした。私が日本にいた頃に会社がセールスの賃金制度をもう少し実績ベースで大きく上下するプランにしてはどうか…と考えていて、私もその「ご意見番」の一人として呼ばれたのです。当時、私はそのプランに賛成でした。ところが他の事業部の部長さん達は伸びる方のあがり代よりうまく行かなかった時の下がり具合の方ばかりを気にして、結局リーマンショックも起こり、そのプランは実行に移されることはなかったのです。
けれど、2年経った今、セールスの賃金制度がまた蒸し返されて来ていてSさんがそのリーダーとして提言をまとめているというのです。
「えびのりさんだけ他の事業部長とは全然違う考えだったって伺ったものですから、一度背景を伺いたいんですけれどお時間はありませんでしょうか?」
もう2年以上も前のことですから、思い出すのにちょっと時間がかかると思いました。けれど、その頃作った資料は全て残っていますから、Sさんには
「週末に記憶を掘り起こしますので、ちょっと待っていただけますか?」
と待ってもらうことにしました。そして同時に、「その会議の時にLさんに同席してもらっていいですか?私、Lさんにもその歴史を知ってもらいたいんです。」と付け加えました。
Lさんのしているビジネスで、SさんとLさんは飲み友達ですから異存はありません。そうして私はパソコンの中のファイルを探して、古い記憶をたぐり寄せSさんと会うことにしたのです。
「結果で賃金に弾力をつけるということは、その結果の測定が正確で公平でなければ、組織を壊しかねません。だから、私はこういう測定用のツールの開発と上司と部下がターゲットについて正しく握ることが出来る様にCRMを導入し、上司の人達の指導力についても向上させるためのトレーニングをカスタムで作成し、2泊3日でグループリーダー達を缶詰にしてトレーニングもしたのです。そして、グループリーダーたちにどういう組織になりたいか、ストラテジックプランを作ってもらったのです。これが、彼ら自身が作ったプランなんですよ!」
私はその時のファイルをいろいろ引っ張り出してSさんとLさんに見せながら説明をしました。
「これだけしっかり用意したら、結果が下ぶれするよりはちゃんとしたゴール設定と部下が結果を出せる様な上司の指導が出来るでしょ?」
Sさんは「うんうん」と大きくうなずきました。「公平な測定が出来なければ賃金体系を弾力的に運用するのは組織を破壊しますものね」
「その通り!」
私はそのやり取りや私たちがしたことをLさんに見て理解しておいてもらいたかったのです。今、その頃考えられていたことは一つも実践されていませんが、そのプランをまとめてやる気に燃えていたグループリーダー達はまだ同じ場所に居るのです。彼らは粛正や恫喝が怖くて頭を低くしていますが、心の中にはまだ小さくても炎は残っていると思ったからです。
すると、Lさんは「セールスの人からこのプランを作った事はちらっと話を聞いたことがありました」
と言いました。そして、Sさんも。
「私、セールスのマネージャーさんからこのプランの存在をお話頂いて、コピーはもらってたんです。しっかりした内容だし、何より魂が籠っているプランだと思いました。それで、何故それがセールスの人達が作ることになったのか…ってところが聞きたかったんです」と打ち明けてくれました。
みんなLさんの様に不器用ではないので、風当たりが強くならない様に黙っていますが、自分たちで作ったプランを「正しい方向」と認識していて、それが判る人にこっそり打ち明けている…というのが判りました。
まるで、「禁書」か「禁教」かって感じです(苦笑)。
でも、その本当の心のうちを隠して、判る人にそっと打ち明けるしかない…という状況は悲しいです。
Sさんは
「戻ってくるとかそういうことは考えた事はないんですか?」
と私に質問してきました。Lさんは私を日本に戻す…という話をしていなかったと思うのですが、Sさんからそういう話題になったので、機会があれば是非考えたいですというお話をしました。
「別に今のビジネスじゃなくてもいいですよ。この会社では他のビジネスもやりましたから、経験はありますし。」
と、私が言いますと、Sさんは
「いいえ、ここに戻って来ていただきたいです。そうじゃないと、このビジネス死んじゃいます」
と、断言しました。
SさんはLさんの上司が独裁的なスタイルで上に座っていては組織が死んでしまうと本気で思っていました。
こうして、「えびのりもどってこい」のメンバーがまた一人増えました。そしてSさんはLさんを守ることもしてくれたのです。
付け足しですが、私がセールスの人と取り組んだ仕組みづくりやプランの策定の話を聞いたLさんは
「自分はそんなこと考えた事もありませんでした。」
と、正直に勉強になったと言いました。それで引け目を感じて欲しいのでは決してありません。人をやる気にさせる工夫を常に考えておくことが重要だって、Lさんに気がついてもらいたかったのです。そして、Lさんが上司のポジションと入れ替わる時に、その仕組みを考えてほしいなと思います。
sさんは私がアメリカに戻ってから日本の支社に入社して来た人でした。すなわち一緒に働いた経験は全くありません。その上担当は人事です。まぁ全然接点がないはずの人でした。
しかしながら、Sさんについては、実際にお会いする前に話に聞いていました。Sさんが会社に来てから、「組織の活性化」の一つとして、組織管理職の人達のEQに注目することになったそうです。多分Sさんの提唱だったのではないでしょうか。
EQとは Emotional intelligence quotientのことで、「心の知能指数」と呼ばれています。自己や他者の感情を理解して、自己の感情のコントロールが出来る能力をさします。
そして、組織管理職の人達で「優秀」と言われて抜擢されている人のEQがかなり低い事実が明らかになったという話を聞きました。想像ですが、上司に認められようと必死で頑張って来て人生これ戦い…みたいな人達が昇進して来ちゃってるんでしょうね。そうすると、Lさんの上司の様に部下を認めてあげることが出来ません。自分の成果ばかりに注目が行っていては、周りの人の感情を読んで自分をコントロールし、周りをうまく乗せる…というトレーニングが余り積めませんから。
「面白い人ですから一度会うといいですよ」
とは言われていたのです。
そして、SさんはLさんの飲み友達でもありました。Lさんと話をすると、大体上司の話が出て来て、このLさんの上司のpeople skillに関してSさんも全く認めていない…という話題で、Sさんが登場するのでした。
私は「いつか日本に戻る」ということで、Lさんに「Sさんに私の履歴書渡そうか?」と半分冗談で言っていたのです。でもまぁそれはともかく一度一緒に飲みましょう…そんな話になりました。
さて、私が日本に出張で出かけたおり、Sさんとお酒を飲む予定にはなっていましたが、仕事をする予定は全くありませんでした。ところが、ひょんなところからオフィスで出くわし、
「質問があるんです」
と、挨拶もそこそこにSさんが切り出しました。それはセールスの賃金制度についてでした。私が日本にいた頃に会社がセールスの賃金制度をもう少し実績ベースで大きく上下するプランにしてはどうか…と考えていて、私もその「ご意見番」の一人として呼ばれたのです。当時、私はそのプランに賛成でした。ところが他の事業部の部長さん達は伸びる方のあがり代よりうまく行かなかった時の下がり具合の方ばかりを気にして、結局リーマンショックも起こり、そのプランは実行に移されることはなかったのです。
けれど、2年経った今、セールスの賃金制度がまた蒸し返されて来ていてSさんがそのリーダーとして提言をまとめているというのです。
「えびのりさんだけ他の事業部長とは全然違う考えだったって伺ったものですから、一度背景を伺いたいんですけれどお時間はありませんでしょうか?」
もう2年以上も前のことですから、思い出すのにちょっと時間がかかると思いました。けれど、その頃作った資料は全て残っていますから、Sさんには
「週末に記憶を掘り起こしますので、ちょっと待っていただけますか?」
と待ってもらうことにしました。そして同時に、「その会議の時にLさんに同席してもらっていいですか?私、Lさんにもその歴史を知ってもらいたいんです。」と付け加えました。
Lさんのしているビジネスで、SさんとLさんは飲み友達ですから異存はありません。そうして私はパソコンの中のファイルを探して、古い記憶をたぐり寄せSさんと会うことにしたのです。
「結果で賃金に弾力をつけるということは、その結果の測定が正確で公平でなければ、組織を壊しかねません。だから、私はこういう測定用のツールの開発と上司と部下がターゲットについて正しく握ることが出来る様にCRMを導入し、上司の人達の指導力についても向上させるためのトレーニングをカスタムで作成し、2泊3日でグループリーダー達を缶詰にしてトレーニングもしたのです。そして、グループリーダーたちにどういう組織になりたいか、ストラテジックプランを作ってもらったのです。これが、彼ら自身が作ったプランなんですよ!」
私はその時のファイルをいろいろ引っ張り出してSさんとLさんに見せながら説明をしました。
「これだけしっかり用意したら、結果が下ぶれするよりはちゃんとしたゴール設定と部下が結果を出せる様な上司の指導が出来るでしょ?」
Sさんは「うんうん」と大きくうなずきました。「公平な測定が出来なければ賃金体系を弾力的に運用するのは組織を破壊しますものね」
「その通り!」
私はそのやり取りや私たちがしたことをLさんに見て理解しておいてもらいたかったのです。今、その頃考えられていたことは一つも実践されていませんが、そのプランをまとめてやる気に燃えていたグループリーダー達はまだ同じ場所に居るのです。彼らは粛正や恫喝が怖くて頭を低くしていますが、心の中にはまだ小さくても炎は残っていると思ったからです。
すると、Lさんは「セールスの人からこのプランを作った事はちらっと話を聞いたことがありました」
と言いました。そして、Sさんも。
「私、セールスのマネージャーさんからこのプランの存在をお話頂いて、コピーはもらってたんです。しっかりした内容だし、何より魂が籠っているプランだと思いました。それで、何故それがセールスの人達が作ることになったのか…ってところが聞きたかったんです」と打ち明けてくれました。
みんなLさんの様に不器用ではないので、風当たりが強くならない様に黙っていますが、自分たちで作ったプランを「正しい方向」と認識していて、それが判る人にこっそり打ち明けている…というのが判りました。
まるで、「禁書」か「禁教」かって感じです(苦笑)。
でも、その本当の心のうちを隠して、判る人にそっと打ち明けるしかない…という状況は悲しいです。
Sさんは
「戻ってくるとかそういうことは考えた事はないんですか?」
と私に質問してきました。Lさんは私を日本に戻す…という話をしていなかったと思うのですが、Sさんからそういう話題になったので、機会があれば是非考えたいですというお話をしました。
「別に今のビジネスじゃなくてもいいですよ。この会社では他のビジネスもやりましたから、経験はありますし。」
と、私が言いますと、Sさんは
「いいえ、ここに戻って来ていただきたいです。そうじゃないと、このビジネス死んじゃいます」
と、断言しました。
SさんはLさんの上司が独裁的なスタイルで上に座っていては組織が死んでしまうと本気で思っていました。
こうして、「えびのりもどってこい」のメンバーがまた一人増えました。そしてSさんはLさんを守ることもしてくれたのです。
付け足しですが、私がセールスの人と取り組んだ仕組みづくりやプランの策定の話を聞いたLさんは
「自分はそんなこと考えた事もありませんでした。」
と、正直に勉強になったと言いました。それで引け目を感じて欲しいのでは決してありません。人をやる気にさせる工夫を常に考えておくことが重要だって、Lさんに気がついてもらいたかったのです。そして、Lさんが上司のポジションと入れ替わる時に、その仕組みを考えてほしいなと思います。