転職サイトに登録すると、直ぐに何カ所かのエージェントからコンタクトがありました。部長・部門長くらすの求人は転職サイトにオープンに掲示されていることはまずないと言った方がいいでしょう。ほとんどが、リクルーティングの会社のエグゼクティブ専門の部門が秘密裏に候補者にコンタクトするというスタイルをとります。

提示された案件は、現在の仕事の完全な競合の部門長もあったり、近い業種もあったり…と、マネージメントレベルの人材探しというのは相変わらず活発なんだなぁと思いました。

日本でもアメリカでも転職活動というのをしたことがないので、初めてのことばかりでした。履歴書に加えて、職務経歴書が必要だというのも知りました。

そうして、書類を整える中で自分が仕事をしてきたこの20年近くを振り返る良い機会となりました。本当に恵まれたキャリアだったと思います。3つの全く違う業種で技術やビジネス等様々な役割をやらせてもらったからです。

ついている…といえばそれまでですが、たまたまだけではない気がします。

「先読みをしてきた」

というのが、この幸運なキャリア形成を助けて来てくれたと思います。いろいろな未来のシナリオを考えて、最善と信じるものを先んじて行ってきました。だから大体の日々は予定調和で平穏に過ごすことが出来たのです。唯一の例外は去年の競合の用意周到な作戦が完結しかけたときにその場に居合わせて、形勢を立て直すどころか、その非を(全く私の非ではない訳ですが)押し付けられた時位でした。

社内で大きくビジネスを意図的に移ったのは2度ですが、そのパターンはいずれも決まっていて、その先に滝があることが私には判るのに、「滝があるからこのまま流れに乗っていてはいけない!」と言っても、他の人にはその滝が見えないし聞こえないのです。むしろ、私の事を「オオカミ少女」として、「自分に注目が欲しいからそんなこと騒ぐんだろう!?」みたいなことを言う位なのです。

そういう状況になったら、「あぁ、今この時点で違う道をとれば滝を回避できるのに」と非常に口惜しく思いながら、その筏を降りて、自分は違う道に行くしか選択肢はありません。判っていて、一緒に滝壺に落ちるのはさすがに出来ませんから。

こうして、私が意図的に動いたあと、どちらも3年後…やはりビジネスは滝壺に落ち、最初のビジネスはもう存在しませんし、二つ目も往時の勢いは全くないビジネスになってしまっています。

「知りながら見殺しにした」とも言えますが、自分のパワー不足で見殺しにすることしか出来なかった…というのがもっと正確な表現でしょう。苦渋の決断で、決して自分が助かっても気持ちのよいものではありませんから。
ですから、今度はこの先読みの能力を活用して、自分で舵を切りたいのです。