彼といる時間の中で、
もうひとつ、はっきりと感じていることがある。
彼は、私の『幸せ』を勝手に決めようとしない。
これがどれほどすごいことか、
人生で一度でも誰かにコントロールされた経験がある人なら
きっとわかると思う。
過去の家庭の中で、
私は『こうした方がいい』『こっちが正しい』と
常に誰かの価値観を押しつけられてきた。
自由に選べるようでいて、
実際は選択肢の枠ごと決められているような毎日だった。
だからこそ、
彼のあの静かな立ち位置が、
私には驚きであり、救いでもあった。
たとえば、
私が何かに迷っているとき。
生活のことでも、子どものことでも、
これからの道のことでも。
彼は『答え』を言わない。
まして、良い悪いの判断も差し出さない。
ただ、
「あなたが選ぶなら、それでいい」
という空気だけをそっと置いてくれる。
その距離感が、私にはぴったりだった。
私の人生は、
誰かの同意がほしくて動いているわけではない。
でも、
『尊重されている』という感覚があるだけで、
決断の重さが軽やかになる。
彼はそれを知っている。
だから、自分の意見よりも先に、
『私がどう生きたいか』を見ようとする。
その瞬間、
私はふと気づいた。
ああ、この人は私の未来に踏み込まないことで、
私を大切にしてくれているんだ。
恋愛でも結婚でもなく、
もっと静かで成熟したつながりが
ふたりの間に育っていっている。
彼は、私の幸せを守ろうとはしない。
代わりに、
『自分の力で幸せを選べる私』を守ってくれる。
その違いこそ、
大人の関係の証なのだと思う。
そして私は、
そんな彼の未来を邪魔しないと決めている。
ふたりの関係は、
所有でも依存でもなく、
尊重と理解のうえに成り立っている。
その形が、
今の私たちにいちばん似合っている。
