彼が何かを決めるときは、
大きな声で宣言することはない。
心の中で静かに線を引き、
その線に従って淡々と動き始める。

最近、その『動き始めた気配』が
前よりもはっきり見える。

仕事でも、家庭でも、
自分の人生をもう一度
しっかり握り直そうとしているような、
そんな凪いだ覚悟がある。

彼は、挑戦するときほど静かになる。
周囲には明るく振る舞いながら、
心の奥では少しずつ準備を進めていく。

私はその動きを、
近すぎず、遠すぎずの距離で見ている。

支えてほしいと言われるわけではない。
頼られる場面も多くはない。
それでも、
あなたが何かを決める前夜のような
独特の空気の張りつめ方は、
ずっとそばで見てきた私には分かる。

少しだけ疲れた顔。
だけど迷いがなくなった人の静かな目。
どこにもぶつけないまま流される、
呼吸よりも小さなため息。

そういうものを知れば知るほど、
私は「手を貸さない」という支え方を学んだ。

あなたは、自分の力で立つ人だ。
だから私は、
『支える』というより
『寄り添う』という形を選んでいる。

大きな助けはいらない。
でも、あなたの人生の節目に、
ただ隣で平常心を保っている誰かが
ひとりいればいい。

それが、私であればいいと思う。

「がんばってね」と言うのは簡単だ。
「大丈夫だよ」と励ますこともできる。
でもそんな表面の言葉より、
あなたはきっと、
静かに空気を整えてくれる存在を求めている。

あなたの背中を押すのではなく、
あなたの歩幅が乱れないよう、
空気を揺らさずに隣を歩くこと。

それが、
あなたの挑戦をいちばん近くで見届ける
私の役割なのだと思う。

あなたが歩き始めたその道を、
私は急がせません。
止めもしません。
ただ、
あなたという人の『選択の強さ』を信じて、
静かに隣を歩くだけです。