何かを話していなくても、
ただ同じ空間にいるだけで、心が静かに整っていく。

コーヒーの香りや、
小さな生活の音。
そんなものの中に、いまの私たちがある。

あの頃のように未来を約束するわけでもなく、
誰かに証明する関係でもない。
それでも、同じ時間を穏やかに過ごせることが、
どれほどの奇跡かを、ふたりとも知っている。

彼は、無理に話そうとしない。
私は、答えを急がない。
それだけで十分に、世界がやわらかくなる。

過去も、痛みも、全部がこの静けさの中に溶けて、
今はただ、穏やかな呼吸だけがそこにある。

目が合うと、
それだけで「大丈夫」と言い合っているみたいに思う。

明日もたぶん、今日と同じように、
特別なことはなくても笑っていられるだろう。
そう思える今を生きている。

この時間が、どんな言葉より確かな答え。
これからの日々を、静かに、いっしょに歩いていく。