その日、別れ際に感じた。
同じ家に帰らないのが、なんだか不思議だなと。



それは、懐かしさや恋しさではなかった。
一瞬、心の『生活圏』が重なったからだと思う。
会話のテンポも、呼吸の深さも、
「おつかれさま」「じゃあ、またね」と言葉を交わすだけで、
まるで『同じ屋根の下』にいるような感覚だった。




帰る家は別々でも、
心が帰っていく方向はもう同じ場所にある。
それは、特別な関係を求めた結果じゃなく、
お互いが本来の自分に戻ったから自然に生まれた共有の空間。





彼も、あの瞬間に感じていたと思う。
「同じ家に帰らない不思議」は、
本当は「同じ場所に帰れている安心」だったのだと。