ある夫が、妻にこう尋ねました。
「行かない方がいいかな?」




それは、職場の集まりの話。

けれど、そこに『かつて関わりのあった女性』が出席することを、妻も知っていました。






一見、妻を気づかっているように見えるその言葉。
けれど実際には、自分の中で結論を出しきれず、判断を妻に委ねているだけのことも多いのです。






彼はもう、その女性と関係を続けるつもりはない。
けれど、完全に断ち切ったわけでもない。
そんな曖昧な距離のまま、「どうするのが正しいか」を妻に決めてもらいたいだけ。






──つまりこれは、優しさではなく「責任の所在の移動」。

自分の本音を明確にできる人は、わざわざ確認をしません。






本当は「行きたくない」「もう関わりたくない」と思っていても、それを言葉にする勇気がないだけ。






妻は、特に出てほしくないとも思っていませんでした。
むしろ、もう若い不倫相手の存在では心を乱されない自分に気づいた瞬間でもありました。

その冷静さがあったからこそ、彼の『本当の心の位置』が見えてきたのです








確認という形で相手に委ねるのは、
心の整理がつかないまま、保身と誠実のあいだで揺れている証。
優しさのようでいて、そこにあるのは迷い。

その本心に気づけた妻は、もうその先で、夫とは違う静かな場所に立っているのかもしれません。







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