冗談って、たいていはその場を和ませるための軽い一言。
けれど、この前の彼とのやりとりは、それだけでは済まない感触がありました。

「出張のとき、泊めてよ」
「じゃあ安くしとく!」
「ビジネスホテル高いからね」

笑いながら交わした会話。
でもそのやりとりの奥に、「一緒に住む」という前提が顔をのぞかせていました。



昔の彼なら、絶対に出てこなかった種類の話題です。
境界線を守り抜くことが当たり前で、そんな冗談さえ口にしない人だったから。

だからこそ、その軽口に「変化」を感じました。
彼の中で、地図の線が少しずつ描き替えられてきている。
守ることに集中していた線が、超えることも視野に入る線へと。



思い返せば、以前一緒に地方へ出かけたときも、夕食までの空き時間に私が
「一緒に住む体で、不動産屋に入ってみる?」と提案したことがありました。
彼も意外と乗り気で、「いいね」と返してくれた。
結局、お店の人に迷惑かなと思ってやめたけれど──その時も、境界を越える想像を共有できたのです。



冗談はあくまで軽やかなもの。
でも、言葉の端に滲む未来の地図は、確かに更新されつつあります。

それはすぐに現実を変えるものではないけれど、彼の心に余白が生まれている証。

そしてその変化に立ち会えることが、何よりも私を安心させてくれます。



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