『味わい尽くす』
テーブルの角で頭をぶつけて泣いた。
おばあちゃんは
まるでテーブルの角が悪いかのように
「こらっ」
とテーブルを叩いた。
泣いてる孫を慰めてあげたかったのだろう。
あなたを泣かせたテーブルを叱っておいたから、と。
何かのせいにして楽にしてあげたかったのかな。
階段から落ちた時は
おばあちゃんは真っ先に
子どもの口に飴を入れた。
階段から落ちたことから気をそらしてあげたかったのだろう。
おいしい飴を食べて嫌なことは忘れなさい、と。
私は恐怖で震えている子どもの口から飴を出させた。
手足が折れてないか、
頭を怪我してないか確認した後、
大丈夫、怖かったね、と抱きしめた。
子どもは大きな声で泣いた。
飴を出させておいてよかった。
15年ほど前のことなのによく覚えている。
何度も思い返す。
テーブルが悪いんじゃない。
よく見ずに歩いたら痛い思いをする。
痛かったことをよく味わって覚えておけばいい。
階段落ちて怖かった。痛かった。
「怖かった、怖かったよー」
って泣けばいい。
怖かった気持ちを自分でしっかり味わえばいい。
とことん味わい尽くせば気持ちが落ち着いていく気がする。
何かのせいにしたり
別のことで紛らわせたりは
あとでやればいいんじゃないかな。
どうしてもそのことで押しつぶされそうな時は
何かのせいにして楽になるのもよし、
他のことで忘れるのもよし、と思う。
すぐに蓋をして
無かったことにするのはもったいないな。
せっかくの経験を無駄にしてるのかも知れない。
学校に行けない経験は、
できたらしたくなかったと思うけど。
これも経験として味わえばいいのかな。
避けられなかったこと。
無駄なこととは思わずに、
せっかくの経験を味わえばいいのかな。
いろんな気持ちを味わった人の方が色んなことを深く知ることができるんじゃないかな。
私も親として、想定してなかった経験をしてる。
私の知恵や度量を試されてるのか。
見ないフリしないで、とことん味わい尽くしてみようかな。