(前半より続く)
1月は僕にとっては鬼門の月だった。なぜなら進級が危うかったから
である。大学に入って一番勉強したのは間違いない。だが試験の手応えは
最悪。留年確率35%といったところか、マジでパチンコ沼で金を使い
果たしたカイジみたいになっていた。そんな状況下で、今回の恋路で
最大のイベントの序章が始まる。
* * *
そう、それはACE(アニメコンテンツエキスポ)である。CMでボコスカ
流れてたみたいだが、僕は録画して見てたので、その存在に気付いたのは
2月の上旬だった。当初はいつものメンツと行くつもりだったが誰も
乗ってくれず、abも「遠い!」と言って乗ってくれなかったので、
ダメ元でMを誘うことにした。なぜダメ元かというと、Mは未だアニメイト
に1人で入るのが精一杯というシャイニングな人だったので、来るわけが
無かったからである。しかし意外にも行くと言ってきた。ダメ元でも
聞いてみるもんだな。日にちは3月31日、この日が深い意味を持つのは
まだ先の話。
同じく2月、来月の半ばに飲み会をしようという話がOから上がる。
またもやトモを誘えと言われたため、再び彼にメールを送った。すると
今回もちょっと無理らしく来れないということになった。このあたりから
少しずつ運が高まっていく。
この後はお互いに忙しすぎて会う機会に恵まれなかった。しかし
合宿の帰り×就活の帰りで出くわしたのは覚えている。運が良いね。
3月9日は成績発表という処刑or恩赦が通告される日だった。まあ今
ゼミで四苦八苦しているのを見れば言わずもがなだが、恩赦が伝えられた。
運が良かった…。
そう、この時期は運の波が高まっていることが痛切に感じられた。
ACEのステージ応募で、超高倍率と考えられる夏色キセキの観覧応募券を
引き当て、一方Mはアクセルワールド、碓氷さんはホライゾンを当てた
ため、交換することによって全員の効用を余すことなく高められた。
くだらないかもしれないが、運の流れというものは存在すると思う。
流れが悪いときは変に足掻こうとせず、流れが良くなるのをじっと待つ。
逆に流れが良いときは思い切って博打を打つのが吉なのだ。
そしてついにフラグを立てる日が訪れる。
* * *
それは3月18日、飲み会の日である。芽さん(以下カツオ)も参加していた
のだが、彼がとんでもないことを暴露する。
カツオ「トモは彼女いるって言ってたよ。」
今更ながらこれマジなの?まあどちらにせよ、この一言が完全に僕を
もっと先に<<加速>>させることになった。なぜなら、ピンゾロ賽が
なくなったチンチロリン、いわば活路が見えた博打になったのだから。
しかもその日のカラオケ、一次会、二次会(?)でのMは僕の好きなM
そのものだった。簡単にいえば、まじカッケーんすよ。当日、翌日は
ちょっと不整脈が出たので、これはアカン、気持ちを伝えようと
いうことに至った。
さて、そうなると問題はタイミングだ。しかし考えることはない。
運が良いことに舞台は用意されているではないか。3月31日、ACEだ。
パンピーはこのイベントの日に告白とか微塵も考えたりしないだろうが
僕らにとっては一番お互いが素でいられる日だと思った。もう変化球を
投げる気なんて毛頭なかったから、この日に告白すればお互いに後悔
しないような返答をもらえると思った。
3月18日から30日はくっそ忙しかった。そのためか31日のことを
思い眠れぬ夜を過ごすこともなかった。そしてあっという間に当日に
なってしまった。
* * *
当日の天気の予報は大嵐だった。電車が止まりまくるほどの雨風に
見舞われるとのこと。この日ばかりは自分の雨男っぷりを呪った。
しかしくどいようだが、このときの僕の運の良さは半端なかった。
なんと雨が降っていなかったのだ。しかし風はマジやばかったっす(泣)
10時に幕張メッセに着く予定が、武蔵野線の軟弱さで11時半に
なってしまった。幕張本郷から1時間かけて歩いていくはめになった
ってことね。実はその日の僕の髪型は、大切な日ってことで、結構
サマになっていたのだが、強風のせいで疲れ果てたサラリーマン
みたいになってしまいクソ萎えた。
着いてからはパラダイスである。僕もMも、自分の好きなことの全てが
目の前に広がっている光景に感動し、昔のようにはしゃいだ。スペース
は意外に狭かったが、結局最後まで何周も見て回った。途中ステージ
観覧のため別行動になるも、それ以外はずっと一緒にいた。とても
シアワセでした。
帰りも雨は降っていなかった。どうやら嵐は過ぎ去ったようだ。
つまりは運のほうも絶好調らしい。余談だが、当日僕は生まれて
初めてガチャガチャでお目当ての物を一発で引き当てた(玉泉日和子)。
告白のタイミングは最寄駅からの途中道と決めていたので、帰りの
電車はホントに落ち着かなかった。だって数時間後に全てが決まって
しまうのだから。そしてついにそのときは訪れる。
* * *
駅からの道を歩いている途中、僕は口を開こうとした。
M「今日は良い夢を見れそうだわー。」
エジャ「え?」
この言葉に、僕は言おうとしたことを噛み殺した。この良い夢と
いうのはもちろん今日一日のことに対しての言葉である。僕がもし
ここで告白なんかしてしまったら、果たして彼女は良い夢を見られる
だろうか?今日の思い出を壊すことになるんじゃないか…。
そんなことを思ったが最後、結局僕は言いだすことができずにMを家に
帰してしまった。このとき本当に自分が弱くて情けなくてちっぽけで
間抜けな存在に思えた。都合のよいことを考えて、逃げたのだ。
なんのためにここまで頑張ってきたんだ。この日に告白するって
決めてたんじゃないのかよ。そんな思いと、また次の良い機会の
ときに言えばいいじゃない、という思いが交り合って倒れそうだった。
家に帰って自分の部屋に閉じこもり、しばらく考え込んでいたが、
やはり今日言わなかったら後悔すると思い、Mを呼び出した。伝えたい
ことがあるから例の交差点に来てくれ、と。
家が近いということが幸いして、Mは了解してくれた。僕は今度こそ
逃げまいと覚悟して現場に向かった。
僕のほうが先に着いたが、30秒もしないうちにMは来た。僕はすべてを
覚悟し、付き合ってくれ、と告白した。
このときのMの表情は今でもはっきり覚えている。いつもの強さが消え、
オオカミの仮面が剥がれて、弱々しい顔をしてた。が、今まで見た
中で一番可愛かった…。数秒の間の後、Mは、今はまだ自分の気持ちが
わからないと、言って回答を先延ばしにした。僕はわかったと言って
家に戻った。
* * *
僕の想像だと4月2日に答えてくれると思っていた。が、Mは延ばしに
延ばし、呼び出しのメールが届いたのは5日だった。その間の
百数時間はさすがに生きた心地がしなかった。だが、ついに処刑or恩赦
が下されるときがやってきたのだ。成績発表のときだって恩赦だったんだ。
今回だって大丈夫、と、まったく根拠のない自信に支えられながら、僕は
例の場所へ急いだ。
* * *
今回は助からなかった。Mの言葉はまるで弾丸のようだった。
理由は、やはり就活の忙しさと、友達のままでいたいというもの。
ごめんなさい、と何度も頭を下げるMに対して僕はそうか、としか言って
やれなかった。自分が勝手に告白したっていうのに、相手に頭を下げ
させるなんて本当に自分は心底自分勝手な人間なんだと感じた。最後に
Mは今度のタイバニの映画一緒に行こうねと言ってきた。Mなりの僕に
対しての思いやりなのだろうか。しかしそれに対しても、僕は
ああ、としか言えなかった。
この後の数時間はよく覚えていない。家に戻って、ただ何もせず
仰向けに寝っ転がってた。そして長い長い恋路は幕を閉じたのでした。
* * *
これでおしまいです。スパっと斬られたので意外にも早く立ち直れました。
悔いイズnothing。Mとは今まで通りのお付き合いを続けていくことにしよう。
読んでくれた人はありがとうございました。