とても重苦しい気分になる本だった。
よかれかしという心は、いつから道を過つのだろう。
どこから道を外すのだろう。
人の心の中は、光だけでできているわけではない。
光の部分と闇の部分を併せ持つことでバランスが作られる。
闇を切り捨てて無垢に光にのみ生きようとすることは、
光をあきらめて純粋に闇にのみ生きようとすることと、
同じぐらいに愚かなことだ。
これまで読んだ東城大病院シリーズとはまた違った、
気骨のある医師が出てくる。
あの白鳥に役者が違うと言わしめる、桜宮巌雄病院長。
死が今よりも身近だった戦中・戦後からの
日本の医療が抱えてきた闇の部分が、今回の主題になる。
作者は一作に一つずつ、医学の現状に苦言を呈しているが、
今回は死体の上に成り立ってきた出自を捨てようとしている
医学への警句が聞こえてくる。
死を看取る。その体験が近すぎて、何度も涙がこみあげてきた。
死は、人が最後にできる、他の人への教育だ。
ひとは、いかに老い、
いかに病を得て、
いかに死ぬのか、
身をもって示す。
それを通じて、いかに生きるか、
学ばせてくれるのだ。
だから、私は死から目をそらさずにいたい。