夕食の後片付けを
していたら
玄関から
新之助の怒声が聞こえた。


新之助は仙人レベルだ。
その彼女が、
怒りの感情を露にする事は実に稀なのだが…


もしや!!
と、思い
濡れた手を拭きながら
玄関へ向かうと
網戸越しに
巨大な其の姿を確認できた。


先日、虎太郎が勇敢に立ち向かった南瓜猫が来ていたのである。


真っ正面から来るなんて
中々なもんだ。



貴方!!
何していらっしゃるのむかっむかっ


尻尾を最大限に太くさせて背中の毛を逆立てて
淑女・新之助は
立ちはだかる。


私が話し掛けても
海老蔵と虎太郎が
参戦しても
南瓜猫は動ずる事なく
臨戦態勢のままなのだ。

ふてぇ野郎だ。


またしても
虎太郎の体当りで
南瓜猫は退散して行った。


と、まぁ
今夜も我が家は賑やかである。




彼は大きな猫だった。
よく見ると
白いアイラインがくっきりしたイケメンなのであった。
ベッドの脇で
仁王立ちしながら


美味しい朝御飯
ちょーだい


と、
空前絶後に可愛らしい声で私を呼ぶ。
起きるまで呼び続ける。


カリカリがあるでしょDASH!



カンカン食べなきゃ
コタチャン倒れちゃう



えらく大袈裟なことを言って私を毎朝説得しているのだ。


階段を降りている途中も
彼女たちの食卓の上でも
虎太郎の口説きは続く。


キラキラウルウルのメメとハイトーンのエンジェルボイスで、懸命なプレゼンだ。


はい。どーぞ。


ここからは静かになる。
これまでの賑やかさが
嘘のように(苦笑)


食べ終わり
丸いテーブルから降りてくる。


美味しかった?


海老蔵や新之助ならば

ごちそうさま

と、挨拶してくれる。


が、虎太郎は無視だ(涙)

ねぇ、
コタチャン
美味しかった?


振り向いてもくれないので何度も聞いてみる。
おしりをポンポンしながら何度も
ねぇねぇ
聞いてみる。



うるしゃいむかっむかっ



あんなに可愛い声で
おねだりしてたのに
お腹一杯になると
此れかよ。


いつもの事だけど
いつも思うけど
猫は本当に面白い。
猫は本当に素敵だ。



素直に生きられるって。
本当に素敵だ。



…ちなみに
今は『絶品』が人気だ。



また、おばちゃんに
買ってもらおうね。



蒸し暑い一日である。

不快指数は
如何程のものか…

頑張らなければならぬのに気持ちが奮い起たない。

思うようにならない為に
自分に対して苛立ってならないのだ。
今日の私は
実に生産性が低い。


食事会などに参加してしまったからだろう。


まぁ、いい。




…良くない。



そんなこんなでも
動きは止められず
市内を気紛れな黒豆号で
移動していた。


じいちゃんと散歩中の
黒パグを発見。

犬の鼻って
濡れた椎茸みたいだ
と、妹は言うが、
彼は、
彼自身が濡れた椎茸
そのものだった。


ヤル気満々で
楽しそうに
実に楽しそうに
散歩している。


そんな彼の姿を
私は羨望の眼差しで
見ていた。


我が家の娘たちに然り
迷いなく
生きる物は
何て美しいんだろう。



お。
時間だ。

お客様の元へ参らねば。