夕暮れが早くなった。
来週は仲秋の名月。
お月見をせねばならない。

我が家の庭園に居住する虫達も賑やかだ。


吹く風も涼やかな初秋の夜の出来事。


居間で小さな蜘蛛を捕らえたのに私に横取りされ(無論、逃がした)御機嫌斜めだった虎太郎が、仏間でエキサイトしていた。

食器を洗う手を休め、様子を伺いに行ってみたら狩りの真っ最中の様子。
次の獲物は何だ?



何が居たの?



問い掛けに、実に愛らしい声で応える虎太郎。

何かを捕らえたらしい。
クリームパンのごとき真ん丸な掌で獲物を押さえ込んでいる様だった。


最上級の得意満面な顔で、其の獲物をくわえて居間まで来てくれた。
御披露目をしてくれるつもりだったのだろう。
お喋りをしようとした途端、口許から一匹の蟋蟀が飛び出してきた。




いかん。
喰わしちゃならん。



逃げ惑う蟋蟀をティッシュペーパーで覆う。

無論、逃がした。


片方の足が無かった様に見えた。



虎太郎を抱き締め、蟋蟀の寿命がいかに儚き物なのか言い聞かせたが、虎太郎としては二度にわたり獲物を横取りされた悔しさからか、私の腕に噛み付いてくる。

痛いけど
仕方なかろう。


虎太郎の三年の人生で初めて見て、初めて捕らえた蟋蟀なんだもの。其を横取りされちゃ悔しくて堪らんのも当然だ。


蟋蟀のお詫びに、今や海老蔵だけにしか与えていない皆大好きなクリスピーで許してもらった。


直ぐに機嫌は直った。


良い子だ。



しかし、
家の中に蟋蟀とは余りに不審。


ババの絵が運ばれてきた最中に紛れ込んだのか?


何れにせよ、
気の毒なのは蟋蟀だ。


合掌。