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※重篤な副作用は一般的に発生頻度が低く臨床現場において遭遇する機会が少ない。
そのため、副作用の発見の遅れが重篤化することもあるので、早期発見・早期対応を簡単に記したものになります。
(自分用にまとめたメモなので、抜けや読解ミスによる誤記がある場合もありますのでご了承ください)
《ネフローゼ症候群》
【症状】
尿が泡立つ、足がむくむ、息苦しい、尿量が少なくなる、体重が増える、体がだるい など
【原因になり得る薬剤】
抗リウマチ薬:ブシラミン、ペニシラミンなど
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):ロキソプロフェン、ジクロフェナク、イブプロフェンなど
ビスホスホネート系骨吸収抑制薬:パミドロン酸二ナトリウム水和物、アレドロン酸ナトリウム水和物 など
分子標的治療薬・生物学的製剤:抗血管内皮増殖因子抗体(ベバシズマブ)、チロシンキナーゼ阻害薬(スニチニブリンゴ酸塩、ソラフェニブトシル酸塩など)、抗腫瘍壊死因子抗体(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル) など
その他:インターフェロン製剤、降圧薬、気分安定薬、抗菌薬
【対処】
疑わしい薬剤の服用を中止し、ただちに受診する
急激な悪化を認めた場合には、早急に入院施設のある専門病院に行く必要がある
【概要】
ネフローゼ症候群とは、様々な原因で尿に蛋白がたくさん出てしまい、その結果血液中の蛋白が減少した状態をいいます。
血液中の蛋白、主にアルブミンが減少すると、組織に余分な水が残り、あふれる状態の「むくみ」が現れる。また肺などに余分な水があふれると「息苦しさ」が現れる。
腎臓に水が十分運ばれないので「尿量が少なくなる」ことになります。体に余分な水が増えるので、「体重が増加」します。体が重い、息苦しい、腸がむくむので食欲が落ちるなど多くの症状が知らずに重なり「体がだるい」と感じるようになります。
ネフローゼ症候群のうち、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群、原因疾患があるものを二次性ネフローゼ症候群とよびます。二次性ネフローゼ症候群の原因として、糖尿病、膠原病、感染症や悪性腫瘍などがありますが、薬剤によるものも二次性ネフローゼ症候群に分類されます。
【早期発見と早期対応のポイント】
(1)早期に認められる症状
大量の尿蛋白、低蛋白血症・低アルブミン血症に起因する尿の泡立ちの増加、浮腫(むくみ)、体重増加などの非特異的な症状です。高度の場合には、胸水や腹水、尿量減少、腎機能低下などの様々な症状が出現します。
さらに随伴症状として、脂質異常症や凝固線溶系異常とそれらに伴う血栓症、および免疫異常症とそれに伴う感染症などを認めることもある。
(2)副作用の好発時期
原因医薬品を使用後数週間から1年位で発症することが多いが、数年以上のこともある
(3)推定原因医薬品
抗リウマチ薬:ブシラミン、ペニシラミン、金製剤
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):ロキソプロフェン、ジクロフェナク、イブプロフェン など
ビスホスホネート系骨吸収抑制薬:パミドロン酸二ナトリウム水和物、ゾレドロン酸水和物 など
抗がん薬(VEGFやVEGF 受容体シグナルの阻害作用を有するもの):ベバシズマブ、パゾパニブ塩酸塩、ソラフェニブトシル酸塩、スニチニブリンゴ酸塩 など
抗腫瘍壊死因子抗体:インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル
インターフェロン製剤:インターフェロンアルファ など
(4)患者側のリスク因子
腎機能障害、高齢者、脱水状態、うっ血性心不全、肝硬変末期などの患者
(5)自覚症状
尿の泡立ちや下腿浮腫を認め、進行すると全身浮腫、尿量減少、体重増加、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、呼吸困難を認める
(6)他覚症状
尿量減少、体液過剰(肺うっ血、胸水、腹水、浮腫、体重増加)、消化器症状(腸管浮腫による悪心、嘔吐、食欲不振、下痢)など
(7)早期発見に必要な検査項目
①検尿(尿蛋白、尿潜血、尿沈渣):蛋白尿、卵円形脂肪体、脂肪円柱
②血液検査:血清クレアチニン
【治療方法】
①早期発見で障害が軽度なら原因薬の中止のみ(少なくとも 1 ヶ月以内で自然寛解することが多い)
②被疑薬の中止にて改善しない場合には、腎組織像に一致した一次性ネフローゼ症候群の治療法に準じて治療
③原因薬の中止でも回復が遷延するときや、間質性腎炎の合併を認めるときは、副腎皮質ステロイド薬を用いる(少量投与やステロイドパルス療法や免疫抑制薬を使用することもある)
④腎不全状態では透析療法を行う
【その他】
(1)医療関係者の対応のポイント
・ 尿の泡立ちの増加、浮腫(むくみ)、体重増加などの非特異的な症状や随伴症状としての脂質異常症や凝固線溶系異常とそれらに伴う血栓症、および免疫異常症とそれに伴う感染症などの症状のいずれかが認められた場合には早急に尿検査(検尿、尿沈渣、尿生化学検査)および血液生化学検査を行い、鑑別診断を行うことが必要。また、経過中症状の持続や急激な悪化を認めた場合には、早急に入院施設のある専門病院に紹介する必要がある。
(2)成人ネフローゼ症候群の診断基準
①蛋白尿:3.5g/日以上(尿蛋白/尿クレアチニン比が3.5g/gCr以上の場合もこれに準ずる)
②低アルブミン血症:血清アルブミン値 3.0g/dL以下(血清総蛋白量6.0g/dL以下も参考)
③浮腫
④脂質異常症(高 LDL コレステロール血症)
※①②は必須項目
(3)その他、見られることがある検査所見
・脂質異常
・凝固線溶異常
・尿潜血陽性
・BUN高値、Cr高値、電解質異常(高K・低 Na 血症)、代謝性アシドーシス
(4)副作用の判別基準(判別方法)
・被疑薬の服用歴(薬剤使用後から数週間~数年)を確認
・腎生検を含めた検査にて他の腎疾患を否定することが重要
(5)判別が必要な疾患と判別方法
①他の原因によるネフローゼ症候群
[一次性]
i)微小変化型ネフローゼ症候群
ii)巣状分節性糸球体硬化症
iii)膜性腎症
iv)膜性増殖性糸球体腎炎
v)IgA 腎症
など
[二次性]
i)糖尿病性腎症
ii)ループス腎炎
iii)血管炎症候群
iv)アミロイドーシス
v)遺伝性腎疾患
など
②急性尿細管壊死
③腎血流低下
④間質性腎炎
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