※重篤な副作用は一般的に発生頻度が低く臨床現場において遭遇する機会が少ない。

そのため、副作用の発見の遅れが重篤化することもあるので、早期発見・早期対応しやすくするために簡単に記しています。

(自己流にまとめたものなので、抜けや見解の違いによる誤記がある場合もありますのでご了承ください)

 

非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作

【症状】

痛み止めや熱冷まし、風邪薬などの使用により、鼻水・鼻づまり、 咳、喘鳴 (ゼーゼーやヒューヒュー)、呼吸困難になる。

窒息したりする危険性もあり、時に顔面の紅潮や吐気、腹痛、下痢を伴うこともある。

 

【原因になり得る薬剤】

NSAIDs(アスピリンやロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬の総称)

内服薬に限らず、湿布や塗り薬でも起こることがある。

 

【対処】

症状・発作が出た場合、すみやかに受診(可能な限り救急外来してください。受診する際には服用した医薬品をお持ちください。

なお、喘息の治療中で、あらかじめ、吸入や緊急時の医薬品の服用など、指示された処置がある方は、まずそれをおこなってください

 

【概要】

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による喘息発作は、プロスタグランジン(PG)合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1 阻害作用をもつNSAIDsにより、気道狭窄症状(鼻閉、喘息など)を呈する非アレルギー性の過敏症(不耐症)である。

COX-1阻害作用が強いほど過敏症状を呈しやすく、選択的COX-2阻害薬が安全に使用できることから、本症の本態はCOX-1阻害薬過敏と判明している。古くはアスピリン喘息(AIA)と称されてきたが、最近ではN-ERDという用語が提唱されている。

 

解熱鎮痛薬(過敏)喘息患者には、機序は不明ながら、後天的にCOX機能の低下状態があり、常に抗炎症性メディエーターである内因性プロスタグランジンE2(PGE)の持続的な産生低下が生じている。それがNSAIDsによるCOX-1阻害で顕在化し、システィニルロイコトリエン(CysLT)などのアレルギーの主役となるメディエーターの過剰産生をまねき、アレルギーや過敏反応として現れてくるものと考えられている。過敏反応のトリガーとしては、防御因子としての減少というステップが重要であり、最終メディエーターとしてはシスティニルロイコトリエン(CysLT)=LTC4,LTD4,LTE4)が重要な役割を演じている。さらに近年では、マスト細胞の活性化とそれに伴う PGD2 の過剰産生が、重症化や急性増悪に関与していることが判明している。

 

【早期発見と早期対応のポイント】
(1)早期に認められる症状

NSAIDs使用後急激な喘息発作鼻症状の悪化(鼻汁や鼻閉)は本症を強く疑う。ただし、以下のような場合はNSAIDsによる過敏症状でない可能性を考える。

a) 誘発症状出現のタイミングが合致しない場合
b) 発作が軽い場合
c) 鼻症状を伴わない喘息発作だけの場合
(※注射薬、坐薬>内服薬>貼付薬、塗布薬の順で症状が早くかつ、強く起こることを認識する。また NSAIDsを含んだ点眼薬も原因となりうることを念頭に置く)

 

(2)自覚症状

NSAIDs服用から通常1時間以内に、鼻閉鼻汁に続き、息苦しさ喘鳴、時に嘔気や腹痛、下痢などの腹部症状

 

(3)患者側のリスク因子

① 普段の喘息コントロールが不十分

喘息発作の繰り返し

 

(4)原因薬に関連したリスク因子

① 坐薬や注射薬は急激な発作をまねきやすい。
② 解熱鎮痛効果の強い薬剤、COX-1阻害作用が強いNSAIDs(インドメタシンやアスピリン)は重症発作を誘発しやすい。
③ 長時間効果のあるNSAIDsでは誘発症状が遷延する。

 

(5)N-ERD(非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作)の頻度

成人喘息の5~10%とされるが、喘息が重症になるほど頻度は高まる。対象母集団によって頻度は異なる。

① 小児喘息患者:まれ
② 思春期発症の喘息患者:少ない
③ 成人発症の喘息患者:約10%
④ 重症成人喘息患者:30%以上
⑤ 鼻茸および副鼻腔炎を有する喘息患者:50%以上

 

(6) NSAIDs 過敏性獲得機序

現時点では不明である。家族内発症は稀

 

(7)発症機序

PG合成酵素であるCOX-1が阻害されることにより過敏症状が誘発される。

COX-1阻害で内因性のPGE2が減少し、何らかの機序によりマスト細胞が活性化され、CysLTの過剰産生が生じ、過敏症状が発現すると考えられている。

したがって、COX-1阻害作用の強いNSAIDsほど過敏症状を誘発しやすく、かつ誘発症状は強度であると考えられている。

 

(8)副作用の判別基準(判別方法)

以下の4点を満たせば NSAIDs過敏(N-ERD)と確定してよい。
① COX-1阻害作用をもつNSAIDs投与後に喘息発作が生じる。
鼻症状(鼻閉、鼻汁)悪化を伴う。
③ 中発作以上の喘息発作である。
④ NSAIDs 投与から1~2時間以内に発作が始まる(ただし貼付薬と塗布薬は除く)。

(※確定診断は内服負荷試験による)

 

【治療方法】

(1)急性期(NSAIDs誘発時)

通常の急性喘息発作と同様で救急対応や入院が不可能な施設では、以下の①、②を行った後に専門施設に転送する。

① 十分な酸素
アドレナリンの早期および繰り返しの投与(筋肉内注射)
アミノフィリン副腎皮質ステロイドの点滴(1~2時間以上かけて)ただし、ステロイドの急速静注は禁忌。またステロイドはリン酸エステルタイプのものを用いる。
抗ヒスタミン薬の点滴投与
抗ロイコトリエン薬の内服気管支拡張薬の吸入(可能ならば)

 

(2)慢性期(長期管理)

通常の慢性喘息と同様

① 吸入ステロイド薬+長時間作用性β2刺激薬(long-acting β-agonists:LABA)が基本となる。また、中等症以上のケースでは、LAMAの併用も考慮する。
② 他のタイプの喘息と比べて、本症に比較的有効性が高いのはクロモグリク酸ナトリウムの吸入である。
③ 難治例では、抗IgE抗体(オマリズマブ)の継続使用が、臨床症状だけでなく、CysLTやPGD2の過剰産生病態を改善し、NSAIDs過敏性も消退させることがRCTで判明している。
④ 抗IL-4/13 抗体(デュピルマブ)が、N-ERD の上下気道症状に有効であることが指摘されている。
鼻茸や副鼻腔炎の治療(内視鏡下手術、点鼻ステロイド薬)は喘息症状も安定化させる。
⑥ 不注意や誤ってNSAIDsが投与されることを防ぐために、病状説明書や患者カードを携帯させる。特に患者カードは他の医療施設や薬局に行った際には必ず提示する。

 

【喘息患者にNSAIDsを投与する際の注意と問題点】

①NSAIDsによる発作の誘発歴がある場合はアセトアミノフェンもしくはセレコキシブを考慮する

②NSAIDsの服用歴がない場合はNSAIDs過敏例が存在するため、①同様に対応するほうが確実に安全である

③喘息発症前にNSAIDsを副作用なしに服用できた場合はNSAIDsを服用可能である。しかし、過敏性は後天的に発現してくるものであるので、上記の①に準じて対処したほうが安全である

④喘息発症後にNSAIDsを副作用なしに服用できた場合はNSAIDs過敏症を否定しても良いと思われる

 

【その他】

(1)医療関係者の対応のポイント

●N-ERDのNSAIDs誘発閾値は常用量の1/5以下のため、少量でも十分な注意を要する。

●比較的安全性が高いのはアセトアミノフェンやセレコキシブ

●アセトアミノフェンは従来は安全とされたが、米国のN-ERD患者において1,000〜1,500mg/回負荷で 34%が呼吸機能低下を示した報告あり。(日本では1回500mg以下で処方が普通)

 

(2)判別が必要な疾患と判別方法 

①NSAIDsアレルギー(特定のNSAIDsに対してのみアレルギー症状)

②皮疹型NSAIDs不耐症(COX-1 阻害作用の強いNSAIDsで蕁麻疹/血管浮腫を生じるが、気道症状は少ない。)

③食物依存性運動誘発アナフィラキシー

④多種化学物質過敏症(MCS)

 

(3)備考

●専門病院においては、他の医療機関向けの紹介状や「解熱鎮痛薬喘息カード」のようなものを作成しているところもある。

 

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