GUILTY!! MAYBE!! 6

 

Thousand Letters

 

千の証言

 

 

「グレン……、そうなのか?」

「太陽寺、すまない。黙っていて……」

 

グレンは被告人席のテーブルに手をつき、うなだれている。

 

「私にも俄かには信じられませんでした。そちらに座る裁判長……EMマナベ殿からお預かりした、このコミュニケーションクリスタルを使うまでは……」

 

ホーリーベルがクリスタルを自身の頭の横に掲げた。側面に“デバック専用”の文字が刻まれている。

 

「NPC感受性の高い方なら、耳には聞こえなくともジャーナルに残っているかも知れませんね……」

 

ホーリーベルはそう言いながら証言台にクリスタルを設置し起動させた。

 

「それでは改めて自己紹介をお願いします」

 

法廷中の視線がポストに注がれる。

 

(……私は)

「……私は」

 

クリスタルから発せられた女性的な高い声。ジャーナルに二つのログが重なる。

 

「……私は黒熊亭に設置されたポストです」

 

グレン以外と話したことの無いポストは、緊張に支柱を固くした。結露した水滴が垂れ支柱に一筋の線を描く。

 

(ポ……ポストが喋った!?)

(魔法……!?霊媒……!?)

(バグだ!!不具合だぞ!!)

 

得体の知れぬ存在への恐怖が傍聴席を支配する。

 

「静粛に!!」

 

裁判長が先を促す。

 

「そう、貴女はポスト。ではどうしてポストである貴女は喋ることができるのでしょう?」

 

ホーリーベルが証言台に設置されたポストに向かい尋問を始めた。

 

「……それは、分かりません」

「裁判長、私がユーの首長として貴方から頂いた資料には、こう書かれていました。

“店主にNPC疑惑のある黒熊亭から異常パケットが継続的に検出されている。調査の結果、同店に設置されたポストが発生源であり、異常パケットは日々増加している。深刻な不具合の可能性がある為、早急に撤去しムーングロウのライキュームに検体を提出されたし。尚、NPC疑惑の店主との関係性についても調査、報告する事”

……と」

「私は……深刻な不具合……」

 

ポストが投函口を震わせている。

 

「……そうです。彼女はこの世界が生んだものに違いありませんが……、本来この世界に在ってはならぬもの。通常、不具合を病んだアイテムは、ライキュームでの解析の後、廃棄処分となります。……が、彼女は本件において重要な証人となり得る為、判決まで猶予をいただいております」

 

ホーリーベルはポストの存在を説明しながら、法廷をぐるりと見渡すと、最後にグレンと視線を合わせた。

 

「ポストに不具合などない!ただのセキュアだ!」

 

グレンがホーリーベルに食って掛かる。

 

「被告人は黙って」

「くっ……!」

 

EMマナベがそう言うと際どいセクシーフィメールレザーアーマーのタウンガードがハルバードの刀身をグレンの首筋に当てた。

 

「こうして言葉を発するポストがあり、被告人はその言葉を聞くことができる。両者を不具合を病んだアイテムとNPCだと考えれば納得のいく話。つまり被告人は有罪……」

 

EMマナベの手がウォーガベルに伸びる。

 

「裁判長、まだ尋問の途中です。続けますよ」

「……どうぞ」

 

裁判長の言葉に苛立ちが混じる。

 

「ではポストさん、黒熊亭ではどういったお仕事を?」

「はい。投函された物を保管して……主人であるグレンさんに渡す……。普通のポスト業です」

「グレン殿は喋るポストに驚いたり怖がったりしませんでしたか?」

「いいえ……。初めから私を自然に受け入れてくれました」

 

ホーリーベルは穏やかな口調で尋問を続けた。

そして、アイテムであるポストから見て、グレンがどう映っていたか尋ねた。

 

「私は……私と普通に会話できるグレンさんを……、初めはNPCだと思っていました……」

 

ホーリーベルは頷くと証言台に背を向ける。

 

「グレン殿は喋るポストに特別反応を示すことなく自然に受け入れ、ポストはそんな彼をNPCであると認識した。アイテムが喋る……、PCである我々にとっては不可解な事であっても、NPCにすれば、そうではないのでしょう。これは彼がNPCであることを示す重要な証言です」

「証言として受理します」

 

冷たく静まる傍聴席。

黒熊亭の面々も、知られざるグレンの一面に動揺を隠すことができない。

 

「意義あり。証人は“初めは”と言った。今はどう思っているのかを聞くべきだ」

 

目を閉じ異議を唱える太陽寺。

 

「認められない。アイテムが被告人をNPCと認識した。それだけで十分だ」

 

……やはり通らないか。

太陽寺は静かに機を窺う。

 

「さらに黒熊亭では過去に何件ものボヤ騒ぎが起きています。ユーのディープフォレスト消防団の報告によると、いずれの火元もポスト付近……、投函物の焼失も確認されています。これは貴女が起こしたものですか?」

「……そうです」

「グレン殿は、これらの原因が貴女にあると知っていましたか?」

 

ポストのネームプレートが、僅かにグレンの方へ傾いた。

 

「グレンさんが……消火してくれましたので」

 

ポストは恥ずかしそうに投函口と取出口を内側へ引っ込めた。

 

「……にも関わらず、本件についてのGMコールは確認されておりません。裁判長、ポストはその存在のみならず、行動までも仕様を逸脱しております。そしてグレン殿がGMコールをしなかった理由、それは自らもNPCの仕様を逸脱していたからに他なりません……」

「意義あり、それは憶測の域をでない」

 

しかしEMマナベは歯牙にも掛けず却下する。

 

「太陽寺殿、検察の主張は以上です。真実かどうか……貴方の手で見極めてください。証人尋問……なさいますか?」

「もちろんだ」

 

これはホーリーベルからの警告だ。

あの裁判長は真実を求めていない。証人尋問で今の主張を崩さねば、すぐにでも有罪判決を下すだろう。俺がこの手で真実を見つけるのだ。そして、ホーリーベルはそれを待っている……。

 

 

 

 

ブリテイン第一銀行に面した酒場、キャッツ・レア―。

ブリタニア冒険隊の面々は、店内の至る所に設置されたコミュニケーションクリスタルから聞こえるタウンクライヤーの言葉を、頭を突き合わせながら待っていた。

彼らは黒熊亭に集う新米冒険者の一団であり、それ故に法外な値で取引される傍聴チケットには手が出せず、今は酒場で裁判の成り行きを見守っていた。

 

「グレンはきっと……、自分が罪を認めれば、ポストの存在を公に晒さずに済むと思ったのね」

 

黒髪のエルフがクリスタルを見つめながら呟いた。

彼女の言葉に促されるように、冒険隊の視線がクリスタルに集まる。

 

「アッシェさん……、すいません。本当は皆さんと一緒に傍聴席で見守りたかったでしょうに……」

「いいの、リュアン。気にしないで。私はこっちの方がいいわ。近くにいたら、見るに堪えられなかったと思う……」

 

アッシェと呼ばれた女性は新米ではなく、冒険隊でもない。騒がしくも温かい黒熊亭に、いつの間にか馴染んでいた者の一人だ。

封鎖された黒熊亭の前で立ち往生していた彼らを、彼女が酒場まで誘導した。

雲行きの怪しい裁判の行方に沈む彼らのテーブルとは対照的に、酒場も、街も、判決の時に向けて興奮の嵩を増し続けている。

 

アッシェはクリスタルを覗き、慣れない仕草で神に祈った。

 

 

 

 

 

「ポスト殿、私は太陽寺という。よろしく頼む」

「太陽寺さん、知っています。お話ができてうれしいです」

 

弁護人、証人尋問。

太陽寺がポストの前に立つ。

 

「それではポスト殿、お聞かせ願いたい。あなたが生まれた時の事を」

 

動きを見せないホーリーベルに代わりEMマナベが口を挟んだ。

 

「ポストの自我は不具合により発生したと先ほどの調査結果が示している。興味本位の無意味な質問に割く時間はない。他にないなら尋問は終わりだ」

 

何もさせないつもりか……?裁判長を黙らせようにも、カルチャーショックはもう撃てない。……いや、ただ正面から真実を求めるのみだ……真実を……。

 

「裁判長、違う。発生した原因を聞いているのではない。生まれて、何を思ったのかを聞いているのだ」

「裁判長、私は弁護人の質問は真実を見極めるにあたり必要と考えます。続けていただきたい」

 

ホーリーベルが太陽寺に続いた。

 

「いいでしょう……。しかし検事殿はご自分の立場をよく理解していないようだ。以降、発言したければ私の許可を求めるように」

「そうですか……。万が一にも“手落ち”があっては、お城での立場がありませんものね……裁判長?」

「くっ……黙れ……」

 

睨みあう両者を横目に、太陽寺はポストに先を促した。

 

「……はじめは、漠然と見ていました。手紙や贈り物を手にした人が、私の前に立って、そしてグレンさんが私からそれを取り出す。アイテムである私は……ただ、見ていました。私の前に立つ、皆さんの顔を……」

 

ポストの言葉がクリスタルを経由して、ぽつぽつとログに刻まれていく。

 

「皆さん、温かくて、わくわくした表情で私の前に立って……。投函物をお預かりすると、私の中はその温もりで満たされました。そして、それを受け取るグレンさんも、やっぱり同じ顔になって……。たまに悲しい想いをお預かりした時も、グレンさんは同じように悲しい顔になりました。それが繰り返されるうちに、私は知りたくなりました……」

「ポスト……」

 

グレンはポストを悲しそうな瞳で見つめている。

ポストは投函口を揺らし、深呼吸する。

 

「どうしたら……、皆さんから託された温もりを損なうことなく、グレンさんに伝えらえるだろう……。どうしたら、少しでも悲しい想いを和らげることができる事ができるだろう……。そう思うようになった私には、いつからか言葉が生まれていました」

「そう思うあまり、贈り物に手を加えたり、手紙を書き換えたりしたことは?」

「ありません。それは私の支柱深くに刻まれた禁忌です」

 

太陽寺は頷いた。

 

「お聞きの通り、ポスト殿はポストというアイテムの役割を追求しただけだ。そして、その仕様を守っている。私もプロの建築士として彼女の姿勢に深く共感するところであり、主人であるグレンがそんな彼女を大切に想う気持ちは想像に易い。如何か、裁判長」

 

太陽寺は傍聴席にそう語りながら、裁判長へと視線を移す。

 

「仕様を守る……?ならば火災の件はどうなのか?そのポストが仕様を逸脱した証拠ではないか。……被告と結託してPCを焼死させる計画だったのでは?」

「それは……」

 

確かに……、ボヤ騒ぎの火元は自分だとポストは言った。だが、今の彼女の話を信じるならば、何か理由があるはずだ。グレンとポストの間には、何か理由が……!

 

「それは違う」

「グレン……」

 

太陽寺の言葉を待たず、グレンが口を開いた。

 

「俺はただ、悴む手を温めようとしてくれていたのだと思っていたが……、あの温もりは贈り主の心だったんだな……」

 

グレンは召喚状から感じた温もりを思い出した。そしてそれはホーリーベルに感じた違和感に繋がる。だが、今は……。

 

グレンは自らの体温を確かめるように、手を握りしめる。

 

「ポストの言う通り、彼女は贈り主の温もりを俺に伝えようとして、投函ボックスから流出するパケットを遮断したんだろう。異常パケットが観測されたのはその為だ。こいつから受け取った投函物からは、どれも不思議な温もりを感じたよ。はじめは加減が分からずに出火させてしまったんだろうが……悪意はない」

「グレンさん、気付いていたんですか……」

「すまないな、半分だけだ……」

 

グレンはEMマナベに向き直った。

 

「ポスト自身は異常パケットがどうとか、そういう事は知りもしないだろう。ポストとして、主人を喜ばせようと試行錯誤した末の、偶然の結果だ。全ては俺の為にした事……そして俺は、それに気付いていながら、そのままにした。全て……おれのせいだ」

 

グレンが太陽寺を、そしてホーリーベルを見て首を振った。

 

「裁判長、このポストは何の不具合もないただのポストで、俺はそれに定型文を吐いていただけ……、そうだな?」

「それは自白か?NPCがアイテムを庇うとは、タウンクライヤー誌の三面記事が賑わうな!」

「くそっ、グレン!」

 

裁判長が笑いながらウォーガベルを手にした……その時!

 

――ガコン!!

 

突然、法廷に投函音が響く。

法廷中の視線が裁判長のウォーガベルから再びポストに注がれる。そこには検事、ホーリーベルが立っていた。

 

「検事殿、いったい何の真似だ?」

「別に、ポストに手紙を投函しただけです」

「なんだと……!?審議の最中にいったい何のお便りだ!ガード、検めろ!」

「待て!そのポストは今もグレンのセキュアだ。アクセス権は彼にしかない!仕様を守れタウンガード!!」

 

ホーリーベルが動いたという事は……これが真実に至る最後のチャンスだ!

太陽寺が身を挺してガードを阻止しようとポストの前に立つ!

 

「裁判長に逆らうヤツは全員有罪で爆破だ!!ガード、こじ開けろ!!」

「……待ってください!!この手紙の宛先は……私……!」

「なんだと……!?」

 

ポストはネームプレートをホーリーベルに向けた。ホーリーベルは静かに頷く。

 

「……ベルさん。私、やってみます……」

「いったい何を教えたのだ……!?」

 

裁判長が目を血走らせホーリーベルを睨む!!

 

――ガコン!

 

再び投函音……しかし今度は投函者の姿はない……。

 

――ガコン、ガコン!!

 

投函音は続き、次第に加速していく!!

 

――ガコガコガコガコガコ!!!

 

マシンガンのような投函音!ポストの留め金が軋み始める!!

 

「グレン、破裂するぞ!開けてやれ!!!」

「ポスト……!!」

 

グレンが投函ボックスを開くと無数の手紙がグレンの足元で山を作り、口を開いた投函ボックスからは決壊したダムの如く新たな手紙が次々と溢れ続ける!!

 

「これは……」

「グレンさん……。私はグレンさんの、黒熊亭のポストで良かった……」

「もう喋るな!破裂するぞ!!」

 

グレンは苦しそうに声を絞るポストの留め金を精一杯抑え込む。ポストはそれでも構わずに続けた。

 

「私がどうやって生まれたのか……、今、分かりました。私の中を行き来するアイテムには、グレンさんに関わる人たちの想いが込められていました。アイテムはすぐに、私からグレンさんに渡っていきますが、その想いが少しずつ私の中に残っていって……混ざり合い……大きくなって……私になった。だからこんなにグレンさんが好きで……グレンさんを想う黒熊亭の皆さんが好きなんです……」

「ポスト……お前は、俺たちが生んだのか……」

「でも、さっき言われた通り、私はこの世界にとって不具合に違いありません。……私はバグなんです」

「それがなんだって言うんだ!?」

「ふふ……。グレンさん、ありがとう。でもバグだからできる事もあるんです……。ベルさんがくれた私の調査結果に書いてありました。私は……私を生んだ皆さんが、この世界に残した全てのログにアクセスできるんです。そして、それを手紙のする事だって……」

「そんな……そんな事をしたら、仕様を守るどころか……おまえは間違いなく消されるぞ!」

「だから、私の想いを……今、伝えさせてください。グレンさん、ありがとう」

「ポスト!!」

 

とめどなく溢れる手紙の波は傍聴席にまで及び、ついには法廷中を埋め尽くした。

 

 

 

 

傍聴立見席、出入口の大きな門に身体を預け、審理の行く末を見守っていた金髪のエルフ、ニキシーは足元に押し寄せる手紙の山に手を伸ばした。

 

「すこいたくさんの想い……。それに不思議……、温かい」

 

差出人には彼女の良く知る者も、そうでない者もいた。しかしどの手紙も、手にするだけでそこに込められた想いが温かく彼女に伝わってくる。

 

……にゃんにゃかにゃー……

……スカルキャップの中ってハg……

……これは23番書架行きです……

……海賊じゃねーから!……

 

それは、グレンがPCとして生きた事を証明する、千の証言だった。

 

「裁判長、見ろ!この手紙……これこそグレンがPCである証拠だ!!」

「バカめ……!バグを利用した証拠は受理できん!残念だったな!!」

「そんな……グレンさん……」

 

力を使い果たしたポストからネームプレートが落ちた。

 

「ポストさん……!!裁判長、本件はノールール有刺鉄線電流爆破ジャッジメント!!認めなさい!!」

「ノールール……?つまり俺が本法廷のルールという事だ!!認めん、認めんぞ!!被告は有罪だ!!」

 

「待てァァァ!!!!コラァァァーーー!!!!」

 

――バリーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

突如粉々に砕け散るステンドグラス……!!!

あれは……あの法衣は……!?

法廷中の視線がシルエットに釘付けとなる!!!

 

「……見ろ、あれは……覆面!?」

 

誰かが叫ぶ!!

公正の法衣を纏った謎の覆面判事が満月を背に屹立している!?

 

「ノールールってのはナァァ!!!テメェで真実を見つけろって事だオラァァ!!!」

 

覆面の額から赤々と血を滲ませるその男……!!

痛々しくも肩に何重もの包帯を巻きつけたその男は……!!

 

謎の覆面判事が跳躍!!!

錐揉み回転!!!!!!!

着地!!!!!!!!!!

 

「あのマスクは……!!嘘か真か……かつてこの破片世界に訪れた危機を救う手段を巡り激しく対立した二人のロードをマットに沈め法曹界を追放されたとされる伝説の裁判長……GMグレート・ニタ!!!」

 

ホーリーベルが興奮して叫ぶ!!

 

「グレート・ニタ!生きていただと!?だが今更遅い!GMオーニタ亡き今、本件の裁判長はこの私!!追放されたお前に何ができる!?」

「攻撃できる!!」

「ぐあー!!!」

 

EMマナベの後ろに降り立つGMグレート・ニタ!!マナベの腕を逆間接に捻じ曲げる!!

 

「ガ……、ガード!!!」

 

際どいセクシーフィメールレザーアーマーのタウンガードがGMグレート・ニタに飛び掛かる!!

 

――ドゴォォ!!

ハルバードが振り下ろされ粉塵が舞う!!

あなや!ハルバードの切っ先に真っ二つに切り裂かれたグレート・ニタの覆面が!!

 

(裁判長の腕がやられたぞ!!)

(ガード死!?)

(どうするのこれ!?)

 

混沌が法廷を満たす!!!

 

「静粛に……しろァァァァ!!!!」

 

木霊する咆哮!!即沈黙する法廷!!!!

そしてあれは……!!あの公正な大胸筋は……!!?

 

「オ……オーニタ……さん……!」

 

負傷した肩を押さえながら大胸筋を見上げるEMマナベ……。

 

「マナベァァァ!!久しぶりだなァァァ!!真実は見つかったかコラァァ!!!」

 

(見ろ!GMオーニタだ!!)

(生きてたの!?)

(ウォォォー!!!)

 

どこからともなく現れたGMオーニタに沸き立つ傍聴席!!

その肩には奇しくもグレート・ニタと同じ包帯が巻かれ、額には血が!!

だがそんな些細なことを気にする者はここにはいない!!

 

「マナベ殿!裁判長が戻った今、貴方の出番は終わりです!退廷なさい!!」

 

ホーリーベルの声にEMマナベはGMオーニタを見上げた。だが彼は、すぐにGMオーニタの真っすぐな視線から目を背けた。

 

「オーニタさん、時代は変わった……。ノールール有刺鉄線電流爆破ジャッジメントがルネッサンスの到来によって求心力を失い廃れてしまったように……、人々は用意された安全な刺激を求めている……。貴方のような人はもう、この世界では生きていけない。それは私も同じ事……」

「マナベァ……、言いたいことはそれだけかコラァ……」

「ふ……、風のようにふらっと現れ、消えてしまう貴方には分からない事でしょうな……。それに貴方は私への直積攻撃によって本件唯一のルールを犯した……!退廷するのは貴方の方だ!!」

「マナベァァ!!!目を逸らすなコラァァ!!!」

 

――バチィィィ!!!!!

 

GMオーニタのビンタがEMマナベの頬を打つ!!

 

「ッ……!!」

「アレはニタ……、グレート・ニタじゃァ……。そして見ろ……ニタは死んだ」

 

両断された覆面を見る二人の男……。

 

「確かに……仰る通り!だが私はすでに有罪判決を言い渡した……!もはやそれを覆すことなど出来はしない……!!」

 

その時……!!

 

「誰か!グレンが……!手を貸してくれ!!」

 

手紙の海から太陽寺の手が、力なく垂れる腕を掴み突き出ている!!

 

「誰か早く……!早く医者を……!!グレンがコネロスしている!!!」

「グレン殿……!!」

 

ホーリーベル、そして傍聴席から人々が手紙を掻き分けグレンの元に駆け寄った。

 

「早く回線マッサージを!このままでは有罪が確定してしまう!!」

 

ポストの作り出した無数の手紙……。

視界に溢れるアイテムはただでさえPCの身体に強い負荷を与える。さらにこの手紙はグレンの感情に膨大なエモートを喚起した。その結果、彼は突発性意識障害……コネロスを発症してしまったのだ……!

 

「無駄だ!すでに有罪は確定した!!」

「いいえ、まだよ!!貴方はまだウォーガベルを振っていない!!そしてその肩では、もう振ることはできないわ!!」

「ちっ……!だが裁判中に被告が姿を消せばその時点で有罪が確定……!!コネロスして何分だ!5分で消えるぞ!!」

「待て!!そうだ……、コネロスはPCにのみ発症する突発性意識障害……!つまりコネロスしたグレンはPC……!!今のグレンが文字通り動かぬ証拠ではないか!!」

 

膝をついたマナベの背をGMオーニタが覆う。

 

「おまえらァァ!!真実はヒトォツ!!!ファイアァァー!!!」

 

GMオーニタがEMマナベを抱き上げ、その姿が満月に重なる……!そしてEMマナベの後頭部をウォーガベル台目掛けて叩きつけた!!!

 

 

 

 

ノールール有刺鉄線電流爆破ジャッジメント。

最終ラウンド59分59秒……。

 

GMオーニタによるサンダー・ファイアー・パワー判決により、グレン・ワイヤーの無罪、確定す。

 

7.Warmth of this world.につづく