さて、帰ってアイロン掛けでもするか。
会社帰り、そう思いながらエレベーターを待っていると、
「帰るんですか?どっか飲みに行きません?」
急に現れた後輩のTに声をかけられた。
彼と飲みに行くのは初めてだが、後輩とはいえ僕と同い年で、
前から妙に話が合うような気がしていたので
僕はアイロン掛けを諦め、その申し出を受ける事にした。
Tにどこか行きたい所があるか聞いたら、
「新宿西口の”飲んべえ横丁”か、東口の”ゴールデン街”」というではないか。
どちらも行った事がないから、行ってみたいのだという。
知る人ぞ知る、共に東京屈指のディープスポットである。
僕も興味がある。
”飲んべえ横丁”は先日姫路からやって来た友人と行ったばかり。
そこで、必然的にもう一方の”新宿ゴールデン街”ということになる。
しかし、実は僕はこれまでゴールデン街に自らの意思で行ったことはなく、
今日はそんなディープスポットに突入する気分ではない、
あそこは心の準備が必要である、と言った。
しかし、彼は彼で、
今晩は嫁さんが実家に帰っている唯一の日であり、
こうやって気軽に飲みに行けるのも珍しいことである、
2人ともゴールデン街に行ってみたいのであれば、いま行かなくていつ行くのか、
などというような事を僕に説いてきた。
なるほどそれもそうだと思い、我々は行くことになった。
Tはゴールデン街への道すがら、ずっとしゃべり続けている。
彼と来て正解だった。
なにか面白いことが起きそうな気がする。

