その日は、散歩などとてもできそうになかった。午前中に一時間、みんなで落葉した灌木の林をぶらついたことは確かだが、昼食(ディナー)のあとは(来客のないときのリード夫人は、食事を早くすませるのだった)、冬の冷たい風が陰鬱な雲や、身にしみとおる雨を吹き送ってきたため、屋外の運動をつづけるなど、まったくの論外となってしまった。
わたしはほっとした。ながい散歩、そても底冷えのする午後のながい散歩は苦手だったし、冷えびえとしたたそがれ時に家路につくのは、いやでいやでたまらなかった。手足の指はかじかむし、保母のベシーにはがみがみいわれて胸のなかは切なくなるし、リード家のイライザジョンやジョージアナには体力的に劣るころを思い知らされて、みじめな気持ちになるばかりであったからだ。
そのイライザとジョンとジョージアナは、いま客間で、母親(ママ)にまつわりついている。夫人は炉端のソファにゆったりとよりかかり、三人の愛児にかもまれて(このときばかりは)、喧嘩もしなければ泣き声も聞こえてこない)、この上なく幸福そうな表情である。だが、このわたしは夫人に爪はじきされ、仲間に入れてもらえない。わたしをじゃまものあつかいしなければならないのは残念だが、わたしがもっと打ちとけた、子どもらしい性質と、もっとかわいらしくて、はきはきした態度ーーいってみれば、もっと明るくて、素直で、自然なものを身につけようと一生懸命になっていることを、ベシーの口から聞かされるなり、夫人自身の目でたしかめるなりするまでは、不平不満のない、幸福な子供にだけさずけられている特権のおこぼれにあずからせてやるわけにはゆかない、と夫人は言うのだった。
「あたしのことを、ベシーがなんて告げ口したんです?」とわたしはききかえした。
「ジェイン、あたしゃね、理屈をこねたり、文句をいったりする人間はきらいだよ。それに、おまえみたいに目上の者にからんだりする子どもなんて、ほんとにいけすかないからね。どこかへ行って、おたなしくすわっといで。ちゃんとした口がきけるようになるまで、ものをいうんじゃないよ。」
客間のとなりに朝食用の小部屋があったが、私は、そこへこっそりもぐりこんだ。そこには本棚があった。やがてわたしは、挿し絵のいっぱいはいっている本を一冊選んで、引っぱり出した。それから、窓の下の腰掛によじのぼると、両足を身近かに引きよせ、回教徒みたいに足を組んで坐った。赤い厚手の毛織のカーテンをからだがかくれるあたりまでひっぱると、周囲からは二重に隔離された格好になった。
(to be continued)ヾ(@°▽°@)ノ