夫の看病が始まった時は、息子はまだ1歳半でした。

(夫の闘病記はコチラから)
 
ある日保育園へお迎えに行ったら、「今日はおやつもお昼もひと口も食べていないんです。」と先生からお話がありました。
 
息子が何かを先生に訴えたけど、上手く伝わらなかったことにヘソを曲げて、癇癪が止まらなくなった。
しばらく落ち着くまで離れたところで過ごしていたけど、お昼が始まってもおやつが始まってもその場から動こうとしない。
お腹が空けば折れるかと思ったが、結局一日中動かなかった。
これはかなり手強いです。
 
とのこと。
 
私が夫の病院に通うようになってから、息子には我慢をさせることが増えました。
 
病院内では大声が出せないので、ギャー!と叫べば、慌てておやつやジュースを与えて、その場しのぎをしていました。
息子が本当に必要なことはわからないまま。
 
母親に息子を預ける時には、ママー!と叫ぶ息子に、ママはすぐに戻るからね、と嘘をついて、一晩離れることも多々ありました。
 
一貫性の無い対応や、嘘を繰り返されると、子供は大人を信用しなくなります。
 
ギャー!と叫べば、自分の思うように事が進むと子供は勘違いをします。
 
癇癪を起こして食事を口にしなかった日、保育園の先生が私に涙ながらに話をしてくれました。
 
「お母さん、本当に大変な時だと思います。でも、もっともっと、〇〇君と向き合ってあげてください。今が一番、大切な時です。」
 
そう言われて、私も泣きながら、
「これ以上、どうやって接したらいいのかわからないです。今が精一杯で。」
と答えました。
 
1歳にしてすでに息子は、「大人には自分の気持ちは伝わらない。でも、困らせれば何とかなる。」ということを学んでしまったのです。
 
当時はそれでもどうしても、息子の言うことを聞いてやれなかった。
 
病院通いはやめられないし、夫が生死を彷徨っている時に、私は体が一つしかないのに、一体どうすればいいの?
 
保育園の先生は、私に余裕が無くなっていることがすぐにわかったのでしょう。
 
とても言いにくい事だったと思いますが、早いうちに話をしてくれたのは、本当に私たち親子の事を心配してくれたからこそだったと思います。
 
母子家庭になってから、周りからは色々なアドバイスを受けましたが、どれも我が家には参考にならないことばかりでした。
 
・頑固で癇癪持ちで子供らしくない。
・精神的成長が遅い。
・オムツがなかなか取れないのは親のせい。
・臆病なのは親の接し方が悪いから。
・嘘をつくのは親が厳しいから。
・しつけがなっていない。
・どんなに叫んだって親が制裁すればいいこと。
・ただ甘やかしているだけ。
 
息子が小さい頃に行く先々で会う人会う人に言われてきた言葉です。
 
でも、夫婦二人三脚で子育てするのと、一人きりで子育てするのとでは、全く状況が違う。
 
「そんなことわかってる。で、一対一の我が家は、どうすればいいの?」
っていつも心で泣いていつました。
 
「何かあったらいつでも言ってね」
と声をかけてくれる人も沢山いました。
 
有り難かったけど、実際に頼ってみると、「〇〇君はこんなところがあって、面倒見るとなるとこれは大変ね。」と苦笑いされて、そのたびに自信を失くしました。
 
ものすごく緊張しながら子育てをしていたので、本当は私も息抜きがしたい。
でも、こんなふうに息子が周りから見放されるのは耐えられない。
 
全て、私の接し方が悪かったことが原因。とにかく息子と私の関係を、しっかり築いていかないと。
 
腹を決めてから時間がかかりましたが、やっと真剣に息子と向き合えるようになったのは、息子が小学校に上がってからです。
 
自分を変えるのは、大変でした。
でも、自分が変われば必ず周りも変わります。
 
今は、息子の事を100%信じてあげられるようになりました。
 
やっと子育てが楽しいと思えるようになったと思ったらもう4月から6年生。
 
あの時、保育園の先生が教えてくれたこと、10年経った今ようやく胸張って「なんとか成長しました!」って言えるかな。
 
人に優しい、穏やかな男の子になりましたよ。
ちょっと、だいぶ、甘えん坊だけど。