桜は出会いと別れの花。
そんな桜の舞うこの季節が私はあまり好きではない。
(まぁ、新学期に間に合うように転校できるんだからラッキーなんだけどね)
母「茜、そろそろ出発するわよ」
『分かった』
今日は引越しの日。
といっても、私の家で引越しは珍しくない。
父の会社は全国各地に支店があるため、転勤は日常茶飯事である。
父自身も旅行好きなため、転勤は苦ではないらしい。
父も家族のことを気にかけ、単身赴任でもいいといっているのだが
20年目でもいまだに新婚気分が抜けないこの夫婦には無理な話である。
母「お父さんももう向こうについてるって言うし、私たちも早くしないとね」
『お母さんはお父さんに早く会いたいだけでしょ』
母「ツレナイこといわないの、お父さんだって早く茜に会いたいと思ってるわよ」
仲が良すぎるのがこの夫婦の問題点だとすら思っている。
母「そういえば茜、学校に挨拶はしてきたの?」
『担任の先生にはしてきたよ、クラスメイトにはこの間、言ってきたから大丈夫』
母「そうじゃなくて、ほら友達とかよ」
なんども、転校を繰り返してきて人の輪の中に溶け込むことには慣れていた。
だけど、そんな人間関係を繰り返しているうちに本当の友情は見えなくなっていた。
(「友達」って言われてもな・・・)
期待も不安もないまま、私は新しい地へと旅立つ。