いつからだろう。夢の中の自分の体が不自由になったのは。
それまでは、歩行器無しでは歩けないほど病気が進行しているにもかかわらず、オフィスの階段を1段飛ばし、2段飛ばしで駆け上がったり、文字通り野山を駆け巡ったりしていたのだ。今でも夢の中では流暢に会話をしている。
朝、そんな夢から覚めて現実に向き合うとガッカリすることも多かった。
今も夢の中の自分は現実よりは症状は軽く、歩行器なしでも歩けたりはするのだが流石に走ったりはしない(出来ない)し、夢の中でも何かしらの問題を抱えている意識はある。介助して貰ったりもしている。
だんだん夢の中でも病状は進んでいくのだろう。
いつからだろう。世界情勢を気にしなくなったのは。
それまでは、日本の防衛力・財政状況、中台問題、北朝鮮の動向、等など色々なことが気になってしかたが無かった。
一昨年、体調が悪化して、延命措置拒否の文章に訪問医の署名を貰ったり、餓死という自死方法を模索していた辺りから、自身の無力感に加えて、そんなことを心配しても結果が出る頃には自分はもうこの世にいない、と思い始めたのがその切っ掛けだろう。
トランプ関税など気にならない。どうせ各国とのDealが成立するまでのことだろうというのもあって、気にしてもしかたが無い。
買い物に行く機会も無いから物価高も気にならない。
気にならなくなると、とても気持ちが穏やかになった。