「最近は対向車に道を譲っても挨拶もしない(若い)ドライバーが多い」

 

「そんなエチケットも知らない(若い)人が増えたから(凶悪な)犯罪が増えた」

 

ある日、デイサービスの送迎車の中で、70代の男性利用者が送迎車を運転していたOTさん(30代女性)に投げかけた言葉である。

そのOTさんは、相手がその施設の利用者であり、且つ運転中だったことも有って、まともには反論しなかったが、その言葉の端々からはかなり心外で納得し難いという雰囲気が感じられた。

 

私にはOTさんが反論したい気持ちが良く理解ったが、構音障害でまともに喋れない上に、その利用者は自分の価値観を押し付ける傾向の有る(いわゆるわがまま放題の)人だと認知していたので、敢えて波風を立てることはしなかった。

 

少し付け加えると、その利用者は、脳梗塞による片麻痺が有ったようだが、今は僅かに失語症(冒頭の文句はスラスラ言える程度)が残る程度で、その施設でのリハビリのプログラムが不足で、途中で外に縄跳びの二重跳びをしに行ったり、他の利用者が手でしがみつくようにして利用している平行棒に、バレリーナさながらに(トイレに行ったばかりの)足を乗せて柔軟体操をしたり、およそ介護認定が取れるとは信じられないほど元気で、他にも書き出したらきりがないほどの傍若無人ぶりなのである。

 

本題に戻って、そのOTさんが言いたかったのは、以下であろうと思う。

 

「エチケットは浸透したら礼など必要なくなる性質のもので、自分たち(の世代)は対向車に道を譲るのが当たり前だからわざわざ礼などしない。」

 

「礼の合図をするのがエチケットだと思っている人は、道を譲るのが当たり前ではなかった頃の時代錯誤。」

 

「犯罪数はあなたの頃より確実に減っている」

 

 

欧米で、扉を開けて入るときやエレベーターに乗るときに女性に先を譲っても誰も礼など言わない。

それが当たり前だからだ。

 

きっとこのOTさんは、

 

「酒を飲んで運転したり、迷惑駐車が当たり前の無法状態だった時代に運転していたおっさんにだけは言われたくない」

 

と思ったのではないだろうか。

 

自戒を込めて、時代にそぐわない古い価値観の押しつけはしない様にしたいと思った事件だった。